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④ バングラデシュの飲料水ヒ素汚染
掲載:2024/04/02 執筆:石山民子
本記事は、『<ひと>から問うジェンダーの世界史』第3巻『「世界」をどう問うか?―地域・紛争・科学』(大阪大学出版会、2024年)の関連記事です。
④バングラデシュの飲料水とヒ素汚染 (石山民子)
(内容)◆井戸の普及とヒ素公害 ◆性差で見るヒ素の健康被害 ◆ヒ素対策の開始と教訓 ◆ヒ素問題克服のカギを握る女性
バングラデシュ(地図)
本文➊~❺の注釈
➊1971年の独立戦争後、コレラや水系感染症の原因とされた表層水利用に代わり、井戸が国際機関、政府、NGOによって推奨されるようになる。当初は「鉄の味がする」と好まれなかったと聞くが、‘80年代に入り掘削費が低下すると普及は加速。‘90年代終わりには97%の人が「改良された水源」にアクセスできるようになった[i]。
[i] WHO/UNICEF Joint Monitoring Program
➋バングラデシュ政府が把握する患者数は約6万人だが、慢性的なヒ素摂取に関連した死は毎年4.3万人とする報告[i]もある。
[i] Arsenic in tube well water in Bangladesh: health and economic impacts and implications for arsenic mitigation, Sara V Flanagan, Richard B Johnston & Yan Zheng
➌代替水源としては、池などの表層水を浄化した水、雨水、ヒ素汚染リスクが低いと言われる深井戸[i]、ヒ素を除去した井戸水の4種類がある。
[i] 1970年代から飲料用に普及した浅井戸に対し、深井戸はヒ素汚染のリスクは低いと言われる。
❹バングラデシュ政府やドナーはヒ素汚染率が高い地域を優先に水供給を進め、2016年までに約100万基の代替水源[i]を設置した。
[i] バングラデシュを知るための66章
❺しかし、2019年の政府調査[i]によれば、1割程度の世帯が基準値を超えたヒ素を含む水を利用している。
[i] Multiple Indicator Cluster Survey 2019