国際社会における21世紀の課題ージェンダー平等に向けて

(執筆:三成美保20140311/参考:『読み替える(世界史篇)』)

◆「ミレニアム開発目標」 

2000年9月、147の国家元首を含む189の国連加盟国代表が参加した国連総会で、21世紀の国際社会の共通目標として「ミレニアム開発目標」が採択された。そこでは、2015年を達成期限に、貧困・乳幼児の死亡・HIV/エイズやマラリアなどの蔓延・ジェンダーの著しい不平等を解決するために8つの目標、21のターゲットが掲げられた❶。2010年の中間総括では、「貧困人口の減少、就学率の向上、健康状態の改善では著しい前進をしている」と評価される一方、母子保健分野の遅れや飢餓の拡大が指摘された。積み残しの課題がとくに多い地域としては、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国があげられている。

◆「持続可能な開発」

「ミレニアム開発目標」の第7目標「持続可能な開発」sustainable developementとは、「将来の世代のニーズを充たしつつ、現在の世代のニーズを満足させるような開発」をさす。これは、国連「環境と開発に関する世界委員会」の報告書『我らの共有する未来』(1987)の中心的理念とされ、広く普及した❷。近代以降の工業化に伴う経済発展が地球資源を枯渇させ、環境を破壊し、わたしたちの生活を脅かすことへの深い反省と強い警告でもあった。

◆ポジティブ・アクション 

政治や雇用、教育におけるジェンダー平等を達成するための手段が、ポジティブ・アクションである❸。1990年代以降、急速に進んだグローバル化や相次ぐ内戦のもと、アフリカでは多くの女性・子ども・老人・障害者が飢餓と貧困にあえいだ。今日、彼らの声を国政に反映させ、内戦や虐殺が二度と起こらないようにするために、アフリカ諸国の多くがポジティブ・アクションを導入している。その結果、世界の国会議員の女性比率ランキングで、アフリカ諸国は、中南米・北欧諸国とともに上位を占める。なかでも注目すべきは、凄惨な内戦と虐殺の舞台となったルワンダである。ルワンダは、2008年以降、下院議員選挙における女性比率の世界1位を誇る(2013年は63.8%)。また、中央・地方政府のあらゆる意思決定機関で女性を30%以上にするよう定められており、未成年者や障害者にも下院議席の割り当てがある。EU諸国でも、政治・経済の意思決定過程における「ダイバーシティ(多様性)」の実現が重要課題とされ、ポジティブ・アクションが活用されている。ジェンダー・人種・世代の多様性こそが、政治的・経済的リスクを克服する手段として期待されているのである。(三成)

関連

*【解説】ジェンダー・ギャップ指数(三成美保)
*【特集7】国連の動向
*14-7.ジェンダー平等に向けた国連の取り組み
*15-1.ジェンダー主流化への道(三成美保)
*【ジェンダー法学2】国際的動向とジェンダー主流化