メランコリーと魔女裁判

掲載:2024-03-09 執筆:三成美保

本記事は、『<ひと>から問うジェンダーの世界史』第1巻「身体・セクシュアリティ・暴力」(大阪大学出版会、2024年)の関連記事です。

第4章 身体管理と身体表現 3)「病い」と「障害」
③メランコリーと魔女裁判(三成美保)
(内容)◆魔女裁判 ◆メランコリー ◆体液病理説の衰退 ◆女性像の変化

メランコリア

ルネサンス以後のヨーロッパでは、「メランコリア」(憂鬱質)は芸術・創造の能力の根源をなす気質と位置づけし直され、芸術家や学者の肖像画や寓意画において盛んに描かれた。

ルーカス・クラナッハ『メランコリア』(1532年)
(出典)File:Lucas Cranach d. Ä. 034.jpg - Wikimedia Commons
アルブレヒト・デューラー『メランコリアI』(1514年)
(出典)File:Dürer Melancholia I.jpg - Wikimedia Commons
Robert Burton『メランコリアの解剖学』(第3版、1626年)の口絵
(出典)File:Robert Burton's Anatomy of Melancholy, 1626, 2nd edition.jpg - Wikimedia Commons

魔女

「魔女たち」(1508年)Hans Baldung (c. 1480 - 1545)
(出典)File:Hans Baldung Grien - Die Hexen.jpg - Wikimedia Commons
「山羊に乗る魔女」(1500年頃)Albrecht Dürer (1471–1528)
(出典)File:Albrecht Dürer, Witch Riding on a Goat, c. 1500-1501, NGA 6674.jpg - Wikimedia Commons

体液病理説

四体液説(1574年ドイツ)
世紀のドイツに描かれた四体液のイラスト
人体図の右半分は女性で、上が 「粘液」、下が「黒胆汁」
左半分は男性で、上が「血液」、下が「黄胆汁」
(出典)File:Quinta Essentia (Thurneisse) illustration Alchemic approach to four humors in relation to the four elements and zodiacal signs.jpg - Wikimedia Commons

<男性タイプ>
黄胆汁質(胆汁質Choleric)=火星(軍人)
荒々しい性格で熱血漢、短気で行動的、野心も強い。気前がいいが傲慢で、意地悪で気難しい面もある。
多血質(Sanguine)=木星(教養・財産に恵まれた人)
人柄は機嫌よく社交的で、ずうずうしいが気前もいい。娯楽が好きで好色であり、教養とは無縁のタイプ。

<女性タイプ>
黒胆汁質(憂鬱質Melancholic)→メランコリア=「魔女」はこれに該当=土星(犯罪者・身体障害者・貧民など)
寡黙で頑固、孤独癖があり、運動も休養も社交も好まない。強欲で倹約家、利己的で根に持つタイプ。神経質で自殺傾向がある。注意深く明敏、勤勉で、一人で思索に耽ってばかりいる。狂気。
粘液質(Phlegmatic)=金星(学者・芸術家)
精神的に鈍く優柔不断で臆病だが、おだやかで公平、人を騙したりしない。

参考文献

魔女とメランコリー 単行本 – 2012/3/2
黒川 正剛 (著)
図説 魔女狩り (ふくろうの本/世界の歴史) 単行本 – 2011/3/16
黒川 正剛 (著)
魔女狩り 西欧の三つの近代化 (講談社選書メチエ) Kindle版
黒川正剛 (著)
世界史のなかの女性たち (アジア遊学 186) 単行本(ソフトカバー) – 2015/8/7
水井万里子 (編集), 杉浦未樹 (編集), 伏見岳志 (編集), 松井洋子 (編集)