目次
離婚(比較)
掲載 :2023-09-15 執筆:三成美保・久留島典子
離婚法(比較)
日本民法における離婚条文763~771条(全9条)(全文)
第四節 離婚
第一款 協議上の離婚
(協議上の離婚)
第七百六十三条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
(婚姻の規定の準用)
第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
(離婚の届出の受理)
第七百六十五条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
(離婚による復氏等)
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
(離婚による復氏の際の権利の承継)
第七百六十九条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
第二款 裁判上の離婚
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
(協議上の離婚の規定の準用)
第七百七十一条 第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
【解説(三成美保)】離婚手続と離婚種別(年次推移)
離婚の種別
日本では、「協議離婚」と「裁判離婚」の双方が存在する。協議離婚が9割を占め、裁判離婚は1割程度である。裁判離婚には、「調停離婚」「審判離婚」「和解離婚」「判決離婚」がある。離婚の訴訟提起にあたっては、原則として、まず、家庭裁判所で「調停」にかけることとされている(家事事件手続法「調停前置主義」)。
家庭裁判所
家庭裁判所は、戦後設置された裁判所である。
一般の紛争(「民事事件」と言う。)は、通常の裁判所(第一審は地方裁判所)において公開で審理される(裁判公開の原則)。
しかし、家庭内の紛争やその他法律で定める家庭に関する事件(「家事事件」と言う。)については、まず家庭裁判所が非公開の手続で処理することとされている。
家事事件は、「審判事件」と「調停事件」の二つに分かれる。調停(調停離婚)あるいは審判(審判離婚)で決着がつかなかった場合には、地方裁判所で審理(公開)が行われ、判決が出される(判決離婚)。判決が出る前に和解する場合もある(和解離婚)。
調停とは、「裁判官一人と民間の良識のある人から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会が,当事者双方から事情を尋ねたり,意見を聴いたりして,双方が納得の上で問題を解決できるように,助言やあっせんを図る手続」(裁判所)を指す。
審判とは、「家庭に関する紛争のうち,家庭裁判所の審判手続で取り扱う一定の事項について,裁判官が,当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の行った調査の結果等種々の資料に基づいて判断を決定する手続」(裁判所)を指す。
離婚種別別の年次推移
(参考)「離婚」に関して、裁判所・法務省が提供している情報例です。
「家事事件」については→「家事事件」(裁判所)https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/index.html
「離婚の訴状」については→「離婚」(裁判所)記入例(離婚訴訟)(PDF:427KB)
「離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~」(法務省)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00011.html
ドイツ民法における離婚条文1564~1587条(全24条)(抜粋)
第7節 離婚
第1款 離婚原因
第1564条 裁判所の裁判による離婚
婚姻は、婚姻の一方当事者又は両当事者の申立てにより、裁判所の裁判によってのみ、解消され得る。婚姻は、裁判所の裁判の確定をもって解消される。離婚を求めるための要件は、以下の諸規定に定めるところによる。
第1565条 婚姻の破綻
⑴ 婚姻が破綻したときに、婚姻は離婚によって解消され得る。婚姻の両当事者の生活共同体がもはや存続しておらず、婚姻の両当事者がそれを回復することが期待できないときに、婚姻は破綻したものとされる。
⑵ 婚姻の両当事者が、1年間に満たない期間しか別居していない場合には、婚姻の継続が、婚姻の他方当事者自身についての事由のために、申立人にとって過当な苛酷状態をもたらすときにのみ、婚姻は離婚によって解消され得る。
第1566条 破綻の推定
⑴ 婚姻の両当事者が1年間にわたって別居し、かつ、婚姻の両当事者が離婚を申し立てた場合、又は申立ての相手方が離婚に同意した場合には、婚姻が破綻したものとみなされる。
⑵ 婚姻の両当事者が3年間にわたって別居している場合には、婚姻が破綻したものとみなされる。
第1567条 別居
⑴ 婚姻の両当事者間に家政共同体が存在しておらず、かつ、婚姻の一方当事者が婚姻の生活共同体を拒むことにより、明らかに家政共同体を回復しようとしない場合には、婚姻当事者は別居しているものである。婚姻の両当事者が、その婚姻住居において分かれて生活している場合にも、家政共同体はもはや存在していないものとみなされる。
⑵ 前条に定められた別居期間の進行は、婚姻の両当事者が関係を修復するためにする短期間の共同生活によって、中断又は停止しない。
第1568条 苛酷条項
⑴ 婚姻が破綻しているときにも、婚姻から生まれた未成年の子の利益のために、婚姻を維持することが、特別の事由により例外的に必要となる場合には、その限りにおいて、又は、申立人の利益を考慮しても、なお例外的に婚姻を維持することが望ましいと認められるほど、離婚がそれを拒絶する申立ての相手方にとって特段の事情により重大な苛酷状態をもたらす場合には、その限りにおいて、婚姻は離婚によって解消し得ないものとする。
以下(略)
(出典)法務省大臣官房司法法制部「ドイツ民法典第4編(親族法)」(法務資料第468号)https://www.moj.go.jp/content/001387121.pdf
(参考)ドイツ民法家族法条文の日本語訳(法務省)については
→法務省大臣官房司法法制部「ドイツ民法典第4編(親族法)」(法務資料第468号)https://www.moj.go.jp/content/001387121.pdf
日本の離婚率の推移(1883~2020年)
日本の離婚率は、明治期には非常に高かったが、昭和期に減少し、平成になって再び増加した。明治16(1883)年の離婚率は3.39(人口千対)と、令和2(2020)年の離婚率の約2倍であった。