目次
【人口史】人類誕生~現代
掲載:2019-12-29 執筆:三成美保
人口の最近の動向
国連の人口予測(2019年版):2100年に109億人
2019年6月17日 に発表された国連『世界人口推計2019年版』によると、世界人口は77億人(2019年)から、2030年の85億人(10%増)へ、さらに2050年には97億人(同26%)、2100年には109億人(42%)へと増えることが予測されている。
(出典)『世界人口推計2019年版:要旨』と関連資料 https://population.un.org/wpp/
→国連広報センターhttps://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/
2011年の世界人口分布
人口増加(BC1000~AD2000)
ヒトの誕生(20万年前)~現代の人口史
人口史の4フェーズ
大塚(2015)は、人口史を4フェーズに分ける(大塚2015:10-13)。
年代 | 開始時の人口 | 特徴 | |
第1フェーズ | 20万年前~7万年前 | 5000人? | ヒト(ホモ・サピエンス)の出現 |
第2フェーズ | 7万年前~1万2000年前 | 50万人? | 出アフリカ・移動 |
第3フェーズ | 1万2000年前~265年前 | 500万人 | 定住生活の開始(農耕・家畜飼育) |
第4フェーズ | 265年前~現在 | 7億2000万人 | 人口転換(産業革命) |
(関連)ホモ・サピエンスの誕生までについては→*1.先史時代の世界(人類の起源・移動地図・年表)
第1フェーズ(ヒトの適応)
ヒト化(第1フェーズ以前)
「ヒト化」には、「ホミニゼーション」と「サピエンテーション」がある。(大塚2015:16,23-24)
ホミニゼーション=サルの仲間からヒトに進化した過程(3段階がある)
- 第1段階:中新世(2600万~500万年前)類人猿から人類の出現→長期にわたる形態の変化
- 1900万~1500万年前 ゴリラ・ボノボ・チンパンジー・ヒトの共通の祖先とオランウータンが分岐
- 970万~760万年前 チンパンジー・ボノボ・ヒトの共通の祖先とゴリラが分岐
- 760万~600万年前 チンパンジーとボノボの共通の祖先とヒトが分岐(チンパンジー・ボノボとヒトのDNAの違いは1~4%)
- 第2段階:(500万~240万年前)アウストラロピテクス属の出現~ホモ属(ホモ・ハビリス)の出現
- 第3段階(サピエンテーション):(240万~20万年前)ホモ・ハビリスの出現~ホモ・サピエンスの出現→短期間での行動の変化
ヒトの特徴
○直立二足歩行
アウストラピテクス属も常習的に二足歩行をしていたと考えられるが、ホモ・ハビリスにいたって、その完成度が高まった。<直立二足歩行>の結果、手を使って道具を作ることができるようになった。また、二足歩行は長距離移動に向いており、サバンナでの生活が可能となった。サバンナでは、暑さ対策が必要で、メラニン色素と汗腺が発達した(生物適応)。(大塚2015:18-21)
○脳の大型化
ゴリラやチンパンジーの脳容量は350~400㎤。アウストラロピテクス属は、体重30~40㎏で脳容量は400㎤程度。ホモ属のみが進化と共に急速に脳容量を増やした。ホモ・サピエンスは、体重60㎏で脳容量は1400㎤にも達した。(大塚2015:19)
○未熟児性
ヒトの赤ん坊は「未熟」な状態で生まれてくる。そのため、長い養育期間が必要となる。子育てには、家族・血縁集団・地縁集団が関わる。
ヒトの赤ん坊が類人猿と同じ発達段階になるには、胎内に1~2年長くとどらまらないといけないが、それだと胎児の頭が産道をとおらない。乳歯がそろうのも生後2年半(チンパンジーは生後1年)かかり、言葉の理解・食物入手には10年以上かかる。(大塚2015:19-20)
○社会性
「食物の分配・交換・贈与という行為は、ヒトに独特に発達した分業と表裏一体の関係にある」。(大塚2015:34)
性による分業は類人猿では見られない→「性による分業は、環境への適応力を高めるなかで強められた可能性が高い」(大塚2015:35)
核家族とコミュニティ(親族集団からなる「バンド」=50人くらい)が、すべての社会に存在する。性による分業だけでは食物をまかなえないので、協力して集団猟を行ったり、コミュニティのメンバー内で食物を贈与しあう(コミュニティ内の「弱者」にも動物性食物の摂取を保証する)。(大塚2015:35)
○雑食性
霊長類は一般に植食性か植食性に近い雑食性。例外的に肉食性が強いのは、サバンナヒヒ。ヒトは、サバンナに進出して、雑食性を強めた。(大塚2015:21-23)
生息地の緯度が高くなるほど、動物性食物への依存度が高まる。ヒトは雑食性を確保したおかげで、寒冷地へと生息地を広げることができた(文化適応)。(大塚2015:31)
ヒトの適応
生物適応と文化適応
ヒトは、「生物適応」と「文化適応」が関連しあっており(文化適応の度合いが大きい点が類人猿と異なる)、「遺伝子/文化共進化」によってヒトは多くの特性を獲得してきた。したがって、「ヒトの適応」は「生物適応」(人口増加)のみで測れるものではなく、「文化適応」が自然生態系を含む地球システムの劣化を引き起こしていることに留意する必要がある。(大塚2015:38,41,45)
ダーウィン適応度
親の一個体あたりが残す子どものうち、生殖年齢まで生存した者の数を指し、遺伝子型にあてはめて測る。
(例)乳糖耐性遺伝子(9000年前の突然変異)を持つ個人が次世代に残す子どもの数は、乳糖非耐性遺伝子をもつ個人よりも4%多い。(大塚2015:41)
ヒトの世代交代
ヒトが誕生してから20万年→1世代を25年とすると8000世代、30年とすると6700世代。そのほとんどは、「狩猟採集民」としての暮らしであった。(大塚2015:45)
- 出生:平均生涯出産数は「4~5」。
- 死亡:生後1年間で1/4が死亡。10歳までに1/2以上が死亡。(大塚2015:56)
第2フェーズ(地球全域への移住)
ヒト誕生の20万年前から今までの温暖期は2回=①13万~12万年前頃、②1万年前~現在
温暖な時代は、10万年間隔で繰り返されている。これには、地球の公転軌道の変化(軌道が扁平な時期は温暖化、円に近づくと寒冷化する)によると考えられる。(中川2017:35)
アフリカからの移住
- 第一ステップ:12万5000年前頃(出アフリカ)
- 第二ステップ:7万~6万年前に開始
(関連)「出アフリカ」については→*1.先史時代の世界(人類の起源・移動地図・年表)
狩猟採集民としての過適応
○火による環境改変:野焼き
○野生大型動物の絶滅:最近10万年の間に野生大型動物の多くが絶滅している(すべての野生大型動物の6割強にあたる120属が絶滅)→動物相の貧弱化を招き、食物資源を不足させる。
○人口飽和:「人口支持力」(食糧資源を最大限に利用した場合の人口)は860~1000万と試算される(ハッサンの研究)→これをもとにすると、地球上の総人口は500万~800万と推計され、地球全体の陸地の1㎢あたりの平均人口密度は0.04~0.06人。狩猟採集民アボリジニの17世紀末の人口は30万人と推定され、人口支持力に近づいていたとされる(平均人口密度は0.04人)。つまり、狩猟採集民としての生活は人口飽和に直面していたと推測できる。(大塚2015:76-84)
第3フェーズ(定住と農耕)
(準備中)
参考文献
大塚(2015):大塚柳太郎『ヒトはこうして増えてきたー20万年の人口変遷史』新潮選書、2015年
リヴィーバッチ(2014):マッシモ・リヴィーバッチ(速水融・斎藤修訳)『人口の世界史』東洋経済新聞社、2014年
中川毅(2017):中川毅『人類と気候の10万年史ー過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』講談社、2017年