目次
【地球史】地球46億年の歴史
更新:2019-09-24 掲載:2016-02-19 作成:三成美保
○地球の歴史
地球史上の大変化
丸山=磯崎(1998)は、「地球史上の大変化」として、次の7つをあげている。
- 45億5000万年前:微惑星の衝突付加によって地球の基本的な成層構造ができた。
- 40億年前:プレートテクニクスの開始、生命の誕生、そして大陸地殻の形成の始まり。
- 27億年前:強い地球磁場の天井と酸素発生型光合成生物の浅瀬への進出。
- 19億年前:はじめての超大陸の形成
- 7億5000万年前~5億5000万年前:海水のマントルへの注入開始、太平洋スーパープルームの誕生と硬骨格生物の出現
- 2億5000万年前:古生代と中生代の境界での生物大量絶滅
- 500万年前~現在:人類の誕生と科学のはじまり
(参考)丸山茂徳・磯崎行雄(1998)『生命と地球の歴史』岩波新書
≪冥王代≫ 46億年前~40億年前
45億5000万年前:微惑星の衝突付加によって地球の基本的な成層構造ができた。
45.6億年前 地球誕生
〇45.6億年前 地球が「微惑星」(半径は現地球の10分の1)として生まれる
〇45.3億年前 地球誕生(現在の地球の大きさとなる=直径1万2756㎞)
45.6~45.3億年前 ジャイアント・インパクトと月の誕生
- 地球ができて4000万年後に「ジャイアント・インパクト(巨大衝突=火星と同規模の惑星(「ティア」と呼ばれる)が地球に衝突し、月が生まれた)」が起こった。
- 衝突がおきてから1か月ほどで月が形成されるとのシミュレーション結果もある。(吉岡2017:69)
※原始地球は、ジャイアント・インパクトを10回程度繰り返して、現在の大きさにまで成長した。(田近2015:58)
→巨大衝突により、地表は数百年にわたってマグマオ―シャンのままであった。
〇地球と月の距離は非常に近く(10万キロ:現在
は38万キロ)、月は1日5時間で地球を公転していた。潮の干満の差は今よりはるかに大きく、2.5時間周期で、琵琶湖サイズの湖では1日に数メートルの干満の差があった。(丸山2016:29-30)
〇太陽は暗い(「暗い太陽」=現在の70%の明るさ)。しかし、短波長のX線やガンマ線は現在の約1000倍。強烈な紫外線が地表に降り注いでいた。(丸山2016:30)
【補足(2019-09-24)】月の誕生(月と地球の関係)
- 月は、ジャンアント・インパクトによって地球からはがれた断片がもとになって生まれた。地球と月は、いまも年3.8㎝ずつ離れている。
- 「ロシュ限界」(惑星や衛星が形状を保ったまま互いの引力で近づける限界の距離のこと。地球半径の約3倍以内では、ジャイアント・インパクトで散らばった物質は大きくなれずに地球に落下する)(田近2015:61):地球の場合、「ロシュ限界」は地球の中心から約1万8000キロメートル(地表からは1万1000キロ)なので、月の形成モデルでは、約2万4000キロ以上離れたところには衛星(月)ができる(ヘイゼン2014:63)。
- 「角運動量」:宇宙には摩擦がないので、回転している物質は何十億年も回転し続ける。地球の自転の角運動量(地球と月の回転する総エネルギー量)と月の軌道は、月誕生からほとんど変わっていない。地球が太陽を公転する周期(1年)もほとんど変わっていない。変わったのは、角運動量の中身である。地球と月の関係では、角運動量は「地球の自転+月の公転」で決まる。現在の角運動量は「地球の自転(24時間で1回転)+月の公転(29日)」であり、月の公転のエネルギー量がはるかに大きい。しかし、月が誕生した当初はすべてが猛スピードで回転しており、角運動量は「地球の自転(5時間で1回転)+月の公転(84時間=3日半)」であって、地球の自転エネルギーも大きかった。(ヘイゼン2014:65-68)
- 惑星運動についての不変の法則(ケプラーの法則)によって、地球と月の関係は次のように変化した。地球の重力にひっぱられると月のスピードは上がるため、月は地球から離れていく。一方で、月の公転速度が速まると、角運動量が上がるため、埋め合わせのために地球の自転が遅くなる。こうして、月は地球から離れていき、地球は自転速度をゆるめ、月の公転速度も遅くなったのである。(ヘイゼン2014:69-70)
- ケプラーの法則:第2法則(面積速度一定の法則)「惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は、一定である。」ニュートン力学における「角運動量保存の原則」に相当する。
(参考)ロバート・ヘイゼン、円城寺守監訳、渡会圭子訳(2015)『地球進化46億年の物語』講談社
丸山重徳(2016)『地球と生命の46億年史』NHK出版
田近英一監修(2015)『地球・生命の大進化』新星出版社
【補足(2019-09-23)】45.3億年前~44億年前 地球誕生時の地球のようす(2014年丸山:ABELモデル)
①「海」はあったか?
〇伝統的モデル=地球誕生時に、大気と海洋がすでに存在していた。
〇ABEL[Advent of Bio-Element Landing=生命構成元素の降臨]モデル(2014年に丸山が提示)=誕生時の地球は「ドライ」な岩石惑星で、44憶年前にはじめて大気と海洋成分が隕石によってもたらされた。(丸山2016:巻頭、23-30)
(根拠)地球の水の起源は、火星と土星の間にある小惑星帯である。
→44億年前の隕石重爆撃を受けて地球は高温(数百度C)となり、地球表層は分厚い大気(約400気圧=300気圧の水蒸気と100気圧の二酸化炭素)に覆われていた。やがて地球が冷却し始め、水蒸気が水になり、窪地にたまり始める。これが「海洋」の誕生である。しかし、二酸化炭素が大気中に残り、太陽エネルギーはさえぎられていた(地表は闇の世界)。(丸山2016:26)
→原始海洋は「猛毒」(超酸性・高塩分濃度・冨重金属)であった。
②「原初大陸」はあったか?
〇伝統的モデル=地球誕生時に原初大陸があったとする説と、原初大陸はなかった(海洋のみ存在)とする説がある。
〇ABELモデル=原始海洋ができてはじめて原初大陸が生まれる。
→原始海洋の深さが4~5㎞で絶妙な深さであったために、地表に原初大陸が出現した。プレート運動によって大陸は分裂していく。原初大陸ができたことによって、地球には多様な表層環境が生まれた。
→巨大な陸地であった「原初大陸」は、栄養源の宝庫であり、原始生命が存在したと考えられる。しかし、プレート運動の結果、原初大陸は40億年前に消失し、太古代の表層環境は安山岩質火山やホットスポットが海面上に散在する海地球となる。その結果、「生命サバイバル」が生じる。(丸山2016:42-45)
→太古代末期(25億年前)に「マントルオーバーターン」(マントル全体が入れ替わる現象。その結果、地球で上下二層に分かれていたマントル対流が一体化し、地表付近のプレートのスケールが大きくなって超大陸が形成されたとする説(田近2015:92))が生じ、地球の表層環境が安定化する一方、磁場が発生して「太陽風」を妨げることができるようになった。これにより、地球は「酸素惑星」となり、生命が増えていくことになる。(丸山2016:51)
(参考)丸山重徳(2016)『地球と生命の46億年史』NHK出版
≪始生代(太古代)≫ 40億年前~25億年前
40億年前:プレートテクニクスの開始、生命の誕生、そして大陸地殻の形成の始まり
40億年前 太陽が明るくなる
38億年前 最古の生物の痕跡(小林2016:98-100)
35億年前 生命の誕生(起源生物)
29~27億年前 光合成による酸素の生成→大酸化事変
≪原生代≫ 25億年前~5億4000万年前
24億5000年前 大酸化イベント(大酸化事変)
- 現在の地球の酸素は21%である。
- 27億年前に、シアノバクテリア(藍藻類)の光合成によって大量に酸素が作られるようになった。その後、24億5000万年前に、突如として大気中の酸素濃度が1万倍以上に増えた。これを「大酸化事変」とよぶ。(『地球』46ページ)
- 24億5000年前 地球の酸素濃度が増えていく。それまでは現在の10万分の1であったが、大酸化イベントによって、24億5000年前には0.01~0.1%になったと推定される。酸素呼吸が必要になるには、現在の酸素の1%以上が必要。酸素増大により、好気性生物が出現したと考えられる。(田近2015:86-89)
24億年~22億年前前 全球凍結
- 22億年前にも全球凍結が生じたとの仮説は、エバンスとカーシュビンク(後述)が1997年の『ネイチャー』で報告。(田近2009:135)
【解説(引用)】全球凍結と大酸化事変(大酸化イベント)
全球凍結と大酸化事変の関係については以下を参照→「全球凍結(スノーボールアース)と酸素大気の形成」(東京大学地球惑星科学杉田研究室 http://www.astrobio.k.u-tokyo.ac.jp/contents/reserch/23.html )
(引用)「この全球凍結は、今から約22億年前、7億年前、6億年前の少なくとも3回生じたと考えられており、我々グループは、特に22億年前(原生代初期)の全球 凍結に注目して研究を進めています。というのも、この全球凍結イベントが、実は、大気中の酸素の増大と深く関連していると考えているからです。(中略)我々の描く全球凍結後の表層環境変動のシナリオは、以下のようなものです。今から22億年前、地球は表面の大部分が氷で覆われる大氷河期を迎えていまし た。当時はまだ酸素濃度が低く、極寒の貧酸素状態の海洋に豊富に存在したメタンは、メタンハイドレートとして水氷の中に大量に貯蓄されていきました。やがて氷河期が終わると、メタンハイドレートが崩壊しメタンが放出されます。最初のメタンの放出は、急激な温暖化とそれに伴うさらなるメタンハイドレートの崩 壊を呼び、暴走的に温暖化が進行します。メタンの放出による超温室状態では、大陸の化学風化が盛んになります。その結果、大陸性の栄養塩が大量に海洋に供 給され、光合成生物の活動の活発化と酸素放出、つまりは大酸化イベントの引き金になったのかもしれません。」(引用:2016-03-10(青字変換は筆者による)/出典:東京大学地球惑星科学杉田研究室 http://www.astrobio.k.u-tokyo.ac.jp/contents/reserch/23.html 最終更新2015年5月8日)
20億年前 「真核生物」の登場(生命の第二の誕生)
- 地球上のすべての生物は3つの「ドメイン」に分けられる。「バクテリア(真正細菌)」(シアノバクテリア:大腸菌・乳酸菌など)、「アーキア(古細菌)」(メタン生成菌)、「真核生物(ユーカリア)」(ヒトを含む動物・植物・菌類・原生生物)である。このうち、バクテリアとアーキアは「原核生物(核膜がない)」という。原核生物と真核生物では、細胞の複雑さが全く異なる。真核生物の登場は「生命の第二の誕生」と言える。(小林2016:111-113)
- 「真核生物」=細胞には酸素呼吸を行うミトコンドリアがあり、現在の1%以上の酸素濃度が必要。大酸化イベントによって酸素濃度が1%を超えたと考えられる。(田近2015:88-89)
- 「細胞内共生説」(今日のほぼ定説)=原核生物(古細菌)に他の原核生物(真正細菌)が住み着き、「真核生物」が生まれた(リン・マーギュリス=女性科学者)。(小林2016:114、田近2015:89)
- 真核生物=最初は単細胞生物→10億年まえくらいに多細胞生物が発生。多細胞生物の大々的発生は、5億7000年まえのエディアカラ生物群。(小林2016:115-116)
19億年前 最古の超大陸(ヌーナ大陸)の誕生
7億6000年前 はじめての動物(「オタヴィア・アンティカ」0.3mm~5mm)が登場(土屋=宮崎2017:38)
7億5000万年前~5億5000万年前:海水のマントルへの注入開始、太平洋スーパープルームの誕生と硬骨格生物の出現
7億年前 全球凍結(スノーボールアース)
- 「全球凍結仮説」(7億年前に地球が凍結したという仮説)
- 1992年にカーシュビンク(カリフォルニア工科大学)によって提唱(あまり注目されず)。
- 1998年にホフマン(ハーバード大学)が「全球凍結仮説」を『サイエンス』に発表。(川上2003:18ー19)
- 7億年前と6億3000年前の全球凍結はその存在が確実視されている。23億年前にも全球凍結があったという説もあるし、そのほかにも2回全球凍結があったという説もある。(土屋=宮崎2017:40)
- 全球凍結時の地表温度はマイナス50°C。海を覆う氷の厚さは1000メートル以上であった。原因は超大陸ロディニアの分裂にあったという見方もある。(土屋=宮崎2017:38)
6億3000年前 全球凍結(スノーボールアース)とその終了(超温暖化)
- 凍結から解凍までかかった時間は1000年。マイナス50°Cからプラス50°C(超温暖化)への変化であった。全球凍結の時代に、火山や温泉は凍らず、二酸化炭素を出し続けた。通常は、二酸化炭素は水に溶けていくが、海が凍っていたため、大気中に蓄積され、「温室効果」を生み出した。(土屋=宮崎2017:38-39)
5億7000万年前 エディアカラ生物群の登場
- 「エディアカラの園」(食う食われるの関係がない=異論もある)の形成
◆エディアカラ生物群の特徴
①軟体性である(殻も足も歯もない)。
②捕食性がない。
③眼がない。
≪顕生代≫=古生代→中生代→新生代
- 2億5000万年まえにおきた3つのビッグイベント(丸山=磯崎1998:138)
- 生物大量絶滅
- 超大陸パンゲアの形成・分裂
- 海洋貧酸素事件
- 顕生代には「大量絶滅」が5回生じた(ビッグ5)。(田近2009:151-152、田近2015:126-127)
- ①O/S 4億4000万年前「オルドビス紀末期」=三葉虫などの多くが絶滅
- ②F/F 3億7000万年前「デボン紀」末期=海洋無酸素イベント(海生動物の絶滅)
- ③P/T境界 2億5000万年前「ペルム紀/三畳紀」境界=史上最大の絶滅とされる(海洋生物種の90%、陸上生物の70%が絶滅)。
- ④T/J 2億1000万年前「三畳紀/ジュラ紀」境界
- ⑤K/Pg境界 6500万年前「白亜紀/古第三紀」境界→小惑星の衝突による大量絶滅(恐竜やアンモナイトの絶滅)=中生代から新生代へ
≪古生代≫ 5億4000万年前~2億5000万年前(カンブリア紀→オルドビス紀→シルル紀→デボン紀→石炭紀→ペルム紀)
5億4000万年前 カンブリア爆発
- 数百万年~1500万年の間に、現在と同じくらいの生物グループ(門)が出現した。短期間での多種多様な生物の出現を「カンブリア爆発(Cambrian Explosion)」とよぶ。生物の特徴は、以下のとおりである。(『生命史』28-51ページ)
- カンブリア紀の生物の特徴
①硬組織をもつ→節足動物(固い殻をもつ)の時代(魚類の台頭まで)
②捕食性である。
③構造色(見る角度によって色が変わる)をもつ。
④「眼」をもつ。 - カンブリア爆発のカギは「眼」にある(光スイッチ説=1998年パーカー)。(田近2015:111)
- 最初の頂点に立ったのは、「節足動物」である(オルドビス紀には三葉虫が拡散し、シルル紀にはウミサソリが覇権を握る)。(田近2015:112-113)
4億7500万年前 植物が陸上に上陸(最初はコケ類)。植物は次第に乾燥に適応し、内陸へと生存領域を広める。大森林が出現し、大気中の酸素が増えて、動物の陸上進出をうながす。(田近2015:115)
4億2000万年前 魚類の台頭
○デボン紀は「魚類時代」
- デボン紀の魚類の種類
- 無顎類(デボン紀以から存在)(カンブリア紀にも魚類はいたが、顎がなかった)
- 有顎類(あごをもつ魚類)=デボン紀に新たに出現
- 板皮(ばんぴ)魚類=頭部と身体の前半分を骨質の「よろい」で覆った魚類(「甲冑魚」ともいう)・・・(例)ダンクルオステウス(全長7m):デボン紀に登場し、絶滅。
- 棘魚類(すべてのひれにとげがある)
- 軟骨魚類(サメやエイの仲間)・・・(例)クラドセラケ
- 硬骨魚類・・・現在のほとんどすべての魚類
- 肉鰭(き)類・・・ハイギョ類・シーラカンス→魚類から両生類に変わる兆候をもつ
3億9000万年前 脊椎動物の上陸(両生類)
3億6000万年前 大森林の形成→「石炭」の生成
- 石炭紀(Carboniferous period)=3億5920万年前から2億9900万年前までの時期
名前の由来はこの時代の地層から多く石炭を産することによる。この地層から石炭を産するのは当時非常に大きな森林が形成されていたことの傍証となる。 - 石炭紀~ペルム紀には、酸素濃度が35%にまで上昇し、昆虫が巨大化した。(田近2015:120)
- ペルム紀には、爬虫類が繁栄。(田近2015:122-123)
- 爬虫類の「単弓類」は、獣弓類から哺乳類へと続く。リストロサウルス(三畳紀)の祖先は、絶滅イベントを乗り切って進化した。
- 「双弓類」は、恐竜、ワニ類、トカゲ類、蛇類の祖先にあたる。
2億5000万年前 超大陸パンゲアの誕生
2億5000万年前 史上最大の絶滅(「P/T境界絶滅事件」)
※P=ペルム紀(Permian)、T=三畳紀(Triassic)
○海洋生物の種の90%以上、陸上生物の種の70%以上が絶滅したとされる。
○その理由を説明するものとして、「プルームの冬」仮説(東京大学・磯崎教授・1997年)があり、多くの研究者に支持されている(『生命史』86-87ページ)。
◆「プルームの冬」仮説
①ペルム紀後期に、超大陸パンゲアの地下でプルームが上昇した(プルームとは、マントル内部の間欠的な対流現象をさす)。
②プルームが地球表層に達して、大規模な火山活動が発生した。
③大量の火山ガスと粉塵が大気中に放出されて、太陽光が遮断された。
④光合成生物が絶滅し、海洋中の酸素が失われていく(「スーパーアノキシア(超酸素欠乏事件)」の発生)。
○プルームの結果、超大陸パンゲアが分裂していく。
≪中生代≫ 2億5000万年前~6550万年前(三畳紀→ジュラ紀→白亜紀)
2億3000万年前 三つ巴の生存競争
○中生代には3種の生物が勢力を競い合っていた。「単弓類」(哺乳類の祖先)、「クルロタラシ類」(ワニの祖先)、「恐竜類」である。最終的には恐竜が勝ち、中生代は「恐竜の時代」となる。(『地球』59ページ)
2億年前 巨大恐竜の出現と繁栄
1億年前~7000万年前 地球は今よりはるかに暖かく、北極にも南極にも氷床は存在しない。(中川2017:p.29)
6550万年前 小惑星の衝突による大量絶滅
○直径10キロメートルほどの小惑星が、メキシコのユカタン半島に衝突した。このときできたクレーターは、直径170キロメートル(チクシュルーブ・クレーター)。衝突時のエネルギーは広島型原子爆弾の約10億倍、衝突地点付近で発生した地震の規模はマグニチュード11以上、生じた津波は高さ約300メートルと推定されている。
○衝突で舞い上がったちりが大気を覆い、太陽光を遮断した。その結果、生物(とくに体重25キログラム以上の生物や浅瀬にいた生物など)の大量絶滅がおこったとされる。(『地球』62ページ、『生命史』124-125ページ)
≪新生代≫ 6550万年前~現在(古第三紀→新第三紀→第四紀(更新世→完新世))
6550万年前~2300万年前 古第三紀
6500万年前~4500万年前 巨鳥の時代(田北2015:158-159)
- ガストルニス(ディアトリマ)=体長2メートル、体重200㎏。飛ばない鳥、どう猛な肉食鳥、哺乳類を襲って食べていたと思われる。大量絶滅を免れた恐竜の生き残りと考えられる。
5000万年前 ほ乳類の台頭と繁栄
- 新生代は「ほ乳類の時代」である。中生代のほ乳類は、小型・夜行性・昆虫を主食としていたが、新生代には、大型化し、昼行性となり、歯が進化する。(『生命史』128-143ページ)
- 初期の哺乳類は、中生代三畳紀に出現した単弓類。中世代白亜紀に、「原獣類」(現在の単孔類=カモノハシ)、「後獣類」(現在の有袋類=カンガルーなど)、「真獣類」(有胎盤類=現在の哺乳類のほとんど)が増加。新生代には、真獣類が繁栄し、分化していく。
5000万年前 メガリスの崩落
2300万年前~260万年前 新第三紀
1400万年前 ヒマラヤ山脈の誕生
700万年前 人類の出現
260万年前~1万年前 更新世(寒冷期=氷期+関氷期)
260万年前~1万年前 マンモスが広く生息。ほかにも大型哺乳類が生息。これらは最終氷期の終わりまでに絶滅した。(田北2015:168)
15万年前 ホモ・サピエンスの登場
1万年前~現在 完新世(後氷期)
○解説
地球時計
○各時代の特徴
開始年代 (年前) | 累代 | 代 | 紀 | 世[26] | 概要 |
---|---|---|---|---|---|
1万1700年 | 顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 人類の時代。更新世末に、大型哺乳類の大規模な絶滅。氷期と間氷期の繰り返し。大規模な氷河。日本海が拡がり、弓状の日本列島となる。 |
258万年 | 更新世 | ||||
533万3000年 | 新第三紀 | 鮮新世 | パナマ地峡形成、ヒマラヤ山脈上昇、寒冷化、氷床発達。ヒトの祖先誕生。 | ||
2303万年 | 中新世 | 生物相はより現代に近づく。アフリカがユーラシア大陸と繋がったことで両大陸間の拡散。インド大陸衝突。孤立している南アメリカとオーストラリアは、異なった動物相。日本海となる地溝帯が細長い海となり島(古日本列島)が誕生。 | |||
3390万年 | 古第三紀 | 漸新世 | 気候変動による大規模な海退。哺乳類の進化・大型化。日本列島に当たる部分は大陸の一部、後に日本海となる地溝帯が拡大。 | ||
5600万年 | 始新世 | 現存哺乳類のほとんどの目(もく)が出現。 | |||
6600万年 | 暁新世 | アフリカ、南アメリカ、南極大陸は分離。ヨーロッパと北アメリカはまだ陸続き。インドは巨大な島。絶滅した恐竜の後の哺乳類、魚類の放散進化。植物は、白亜紀に引き続き被子植物が栄え、この時代にほぼ現代的な様相 | |||
1億4500万年 | 中生代 | 白亜紀 | ジュラ紀から白亜紀の境目に大きな絶滅などはなく、白亜紀も長期にわたり温暖で湿潤な気候が続いた。恐竜の繁栄と絶滅。哺乳類の進化、真鳥類の出現。後期にかけて各大陸が完全に分かれ配置は異なるが現在の諸大陸の形になる。末期に小惑星の衝突が原因と推定されるK-T境界の大量絶滅。 | ||
2億130万年 | ジュラ紀 | パンゲア大陸がローラシア大陸、ゴンドワナ大陸へ分かれ始め、後期にはゴンドワナ大陸も分裂を開始。絶滅を生き残った恐竜が栄えた。被子植物の出現。有袋類、始祖鳥出現。ジュラ紀は現在より高温多湿で、動物・植物はともに種類が増え、大型化していった。 | |||
2億5217万年 | 三畳紀 | パンゲア超大陸、平原化、砂漠化。気温上昇、低酸素化。恐竜の出現。紀末に76%が大量絶滅。 | |||
2億9890万年 | 古生代 | ペルム紀 | ユーラメリカ大陸とゴンドワナ大陸が衝突し、さらにはシベリア大陸も衝突しパンゲア大陸へ。単弓類の出現。紀末に95%以上の生物種が絶滅。シベリア洪水玄武岩が原因か。P-T境界 | ||
3億5890万年 | 石炭紀 | ゴンドワナ大陸、ローレンシア大陸、バルチック大陸、ユーラメリカ大陸。シダ植物の繁栄、昆虫の繁栄、爬虫類の出現。 | |||
4億1920万年 | デボン紀 | 両生類の出現、シダ植物、種子植物の出現。紀末に海洋生物種の82%が絶滅した。 | |||
4億4340万年 | シルル紀 | 昆虫類や最古の陸上植物が出現 | |||
4億8540万年 | オルドビス紀 | オウムガイの全盛期で三葉虫のような節足動物や筆石のような半索動物が栄えた。甲冑魚のような魚類が登場。紀末に85%の種の大量絶滅。オゾン層形成。 | |||
5億4100万年 | カンブリア紀 | 海洋が地球上のほぼ全てを覆い尽くす、動物門のほとんどすべてが出現したと考えられている。「カンブリア爆発」と呼ばれる急激な生物多様化。 | |||
6億3500万年 | 原生代 | 新原生代 | エディアカラン | 多細胞生物の出現。エディアカラ生物群 紀末に大量絶滅。6億年前に全球凍結(スノーボールアース) | |
8億5000万年 | クライオジェニアン | 7億年前に全球凍結(スノーボールアース) | |||
10億年 | トニアン | ロディニア超大陸の分裂開始。 | |||
12億年 | 中原生代 | ステニアン | ロディニア超大陸の形成。大陸棚の拡大。シアノバクテリアの最盛期、酸素分圧(酸素濃度)が現在の10%以上まで上昇。真核生物の出現。代末に有性生殖発現。 | ||
14億年 | エクタシアン | ||||
16億年 | カリミアン | ||||
18億年 | 古原生代 | スタテリアン | 大陸がはじめて安定した(クラトン化)。最初の超大陸(ヌーナ大陸)出現か? 光合成により遊離酸素を放出する微生物シアノバクテリアの繁栄。大酸化イベントによる縞状鉄鉱層の形成。大部分の嫌気性微生物の消滅。ヒューロニアン氷期、22-23億年前に雪玉地球。全大陸にわたる造山活動。2回の最大級の小惑星衝突。 | ||
20億5千万年 | オロシリアン | ||||
23億年 | リィアキアン | ||||
25億年 | シデリアン | ||||
28億年 | 始生代 | 新始生代 | 初期に全生物の共通祖先が現れ、細菌の祖先と古細菌類の祖先が誕生したと推定されている。藍藻(シアノバクテリア)の出現。始生代の微生物の化石(微化石)がいくつか見つかっている。 | ||
32億年 | 中始生代 | ||||
36億年 | 古始生代 | ||||
40億年 | 原始生代 | ||||
46億年 | 冥王代 | 地球誕生、月の形成(ジャイアント・インパクト説)、隕石の後期重爆撃期。地殻と原始海洋ができ、有機化合物(生命前駆物質)の化学進化の結果、原始生命体が誕生したと考えられている。40億年前の岩石や44億年前の結晶が見つかっている。 |
累代(eon) | 代(era) | 紀(period) | Ma(単位:百万年) |
---|---|---|---|
顕生代 (Phanerozoic) | 新生代 (Cenozoic) | 第四紀(Quarternary) | 2 |
新第三紀(Neogene) | 23 | ||
古第三紀(Paleogene) | 66 | ||
中生代 (Mesozoic) | 白亜紀(Cretaceous) | 146 | |
ジュラ紀(Jurassic) | 200 | ||
三畳紀(Triassic) | 251 | ||
古生代 (Paleozoic) | ペルム紀(Permian) | 300 | |
石炭紀(Carboniferous) | 359 | ||
デボン紀(Devonian) | 416 | ||
シルル紀(Silurian) | 444 | ||
オルドビス紀(Ordovician) | 488 | ||
カンブリア紀(Cambrian) | 542 | ||
原生代 (Proterozoic) | 新原生代 (Neoproterozoic) | エディアカラ紀(Ediacaran) | 630 |
クリオジェニアン(Cryogenian) | 850 | ||
トニアン(Tonian) | 1000 | ||
中原生代 (Mesoproterozoic) | ステニアン(Stenian) | 1200 | |
エクタシアン(Ectasian) | 1400 | ||
カリミアン(Calymmian) | 1600 | ||
古原生代 (Paleoproterozoic) | スタテリアン(Statherian) | 1800 | |
オロシリアン(Orosirian) | 2050 | ||
リアキアン(Rhyacian) | 2300 | ||
シデリアン(Siderian) | 2500 |
参考:上表:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E8%B3%AA%E6%99%82%E4%BB%A3(一部改変)
○超大陸
- 約19億年前、小大陸がぶつかりあいながら、最初の大陸が生まれた。これを「ヌーナ大陸 (Neuna、NunaまたはNena)」(またはコロンビア大陸)と呼ぶ。ヌ-ナ大陸の最初の大きさは、北アメリカ大陸よりも少し大きい程度。(田近2015:93)
- パノティア大陸 (Pannotia) : 約15億年前-10億年前
- ロディニア大陸 (Rodinia) : 約10億-7億年前
- パンゲア超大陸 (Pangea) :約2億5000年前に大陸が次々と衝突してできた「超大陸」。やがて、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸に分裂。
- ゴンドワナ大陸 (Gondwana) : 前ゴンドワナ大陸は約6億年前にロディニア大陸が分裂して誕生。その後、パンゲア超大陸が分裂して誕生。
- ローラシア大陸 (Laurasia) あるいはユーラメリカ大陸 (Euramerica) とも : 2億-6千万年前
- アフロ・ユーラシア・アメリカ大陸(アフロユーラシア大陸とアメリカ大陸がベーリンジアでつながれた一つの超大陸) (Afro-Eurasia-America) :1万年前まで
○氷河期
地球には、少なくとも4回の大きな氷河期があったとされる。
- (1)24億年前から21億年前頃の原生代初期
- 最も古い氷河期(ヒューロニアン氷期 Huronian glaciation)があったと推測されている(仮説)。
- (2)原生代末期(7億5千万年前からのクライオジェニアン氷期)
- クライオジェニアン(Cryogenian)は新原生代の2番目の紀である。8億5000万〜6億3500万年前に当たり、スターティアン氷期とマリノア氷期を含む。
- スターティアン氷期 Sturtian glaciation(~7億年前)
- マリノア氷期 Marinoan glaciation(~6.4億年前))
- これは、過去10億年のなかでおそらくもっとも厳しいものであり、氷が赤道まで覆いつくしスノーボールアース(全地球凍結、全球凍結)を作り出した。この氷河期の終結が引続き起きたカンブリア爆発の原因になったとの説もある。
- クライオジェニアン(Cryogenian)は新原生代の2番目の紀である。8億5000万〜6億3500万年前に当たり、スターティアン氷期とマリノア氷期を含む。
- (3)古生代
- 4億6千万年前から4億3千万年前にかけて、小さな氷河期(アンデス−サハラ氷期 Andean-Saharan glaciation)があった。
- 3億6千万年前から2億6千万年前にかけて、氷河の拡大期(カルー氷期 Karoo Ice Age)があり、このときには生物の大量絶滅が起きている。
- (4)現在の氷河期
4000万年前の南極の氷床の成長により始まり、300万年前から起きた北半球での氷床の発達とともに規模が拡大した。更新世に向かうにつれて更に激しくなり、その頃から氷床の拡大と後退の繰り返しによる4万年と10万年の周期が世界中で見られるようになった。最後の氷期(最終氷期)は約1万年前に終った。
参考文献
土屋健、宮崎正勝(2017)『地球と人類の46億年史ー地球誕生から生命の進化、ホモ・サピエンスの拡散、文明の発展まで』洋泉社
吉岡一男(2017)『初歩からの宇宙の科学』NHK出版
中川毅(2017)『人類と気候の10万年史』講談社ブルーバックス、2017年
丸山重徳(2016)『地球と生命の46億年史』NHK出版
小林憲正(2016)『宇宙からみた生命史』ちくま新書
田近英一監修(2015)『地球・生命の大進化』新星出版社
ロバート・ヘイゼン、円城寺守監訳、渡会圭子訳(2015)『地球進化46億年の物語』講談社
田近英一(2009)『凍った地球ースノーボールアースと生命進化の物語』新潮選書
沼澤茂美、脇屋菜々代(2009)『140億光年のすべてが見えてくる宇宙の事典』ナツメ社
川上紳一(2003)『全地球凍結』集英社新書
『地球』(2011):ニュートンムック別冊『地球ー宇宙に浮かぶ奇跡の惑星』ニュートンプレス、2011年
『生命史』(2010):ニュートンムック別冊『生命史35億年の大事件ファイル』ニュートンプレス、2010年
『宇宙』(2010):ニュートンムック別冊『宇宙はどうやって誕生したのか』ニュートンプレス、2010年
大藤(富山大学)「一般地質学(講義資料)」:「第13~14話:地球史46億年間の環境変化」(PDF) http://www3.u-toyama.ac.jp/shige/geol_syl/PG13.pdf