近現代日本の天皇制ー男系男子主義

掲載:2023-07-08 執筆:三成美保

男系男子主義とは?

日本では、古代から江戸期まで女性天皇が8名(10代)存在し、女性が皇位から排除されてきたわけではない。

「男系男子主義」は、父親から息子(男系男子)にのみ地位が継承される原理を指し、日本の皇室典範が定める近代以降の皇位継承原理である。旧皇室典範のもとでは、「女性皇族が天皇及び皇族以外の男子と結婚した場合は、皇族ではなくなる(第12条)」と規定されており、この原則は現行皇室典範にも継承された。このため、皇室では、男性は宮家を創設するが、女性は宮家を創設できない。

今日の皇位継承をめぐる議論では「女性天皇」と「女系天皇」が主な論点とされる。そこでは、「女性天皇」とは天皇の娘(男系女子)が天皇になること、「女系天皇」とは天皇の娘の息子(女系男子)が天皇になることを想定している。現在、後者について「女性宮家」を創設し、「女系男子」もまた皇位継承権を持つようにすべきという議論がある。

ヨーロッパの多くの王家では、伝統的に「男子優先主義」を取り、男子がいない場合には女子もまた王位に就いた。イギリスで女王が多いのはこの理由による。しかし、フランスなどでは女性が王位に就くことは認められなかった。今日、ヨーロッパの多くの王室では、子の性別を問わず、第一子から順に王位継承権を認めるようになっている。

(参考)三成美保「天皇制と男系男子主義」三成美保他(2019)『ジェンダー法学入門(第3版)』法律文化社

近代以降の天皇制ー男系男子主義

近現代日本の天皇制は「男系男子主義」をとることを憲法で明文化した。

【資料】大日本帝国憲法と皇室典範

その1:大日本帝国憲法(明治二十二年二月十一日)

第1章 天皇

  • 第1条大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
  • 第2条皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
  • 第3条天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
  • 第4条天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
  • 第5条天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
  • 第6条天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
  • 第7条天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
  • 第8条天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
    2 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
  • 第9条天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス
  • 第10条天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
  • 第11条天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
  • 第12条天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
  • 第13条天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
  • 第14条天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
    2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
  • 第15条天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス
  • 第16条天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス
  • 第17条摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
    2 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

大日本帝国憲法の全文については⇒憲法条文・重要文書 | 日本国憲法の誕生 (ndl.go.jp)

その2:皇室典範(こうしつてんぱん)(昭和22年1月16日法律第3号)
  • 第1章 皇位継承
  • 第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。 
  • 第2条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。

–1.皇長子

–2.皇長孫

–3.その他の皇長子の子孫

–4.皇次子及びその子孫

–5.その他の皇子孫

–6.皇兄弟及びその子孫

–7.皇伯叔父及びその子孫

  •  前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
  •  前2項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。

皇室典範の全文については⇒法令検索「皇室典範」を検索

【解説】戦前の皇室典範(旧皇室典範)

適用期間:1889年(明治22年)から1947年(昭和22年)まで。昭和22年5月2日に廃止され、5月3日に、現行の皇室典範(昭和22年1月16日法律第3号)が日本国憲法と同時に施行された。

内容:皇位継承順位など皇室に関する制度・構成等について規定していた家憲である。旧皇室典範に比べて現行皇室典範はかなり簡略化されているが、皇位継承順位には変更がない。

性格:旧皇室典範は大日本帝国憲法と同格とみなされ、帝国議会では改正ができなかった。現行の皇室典範は法律であるため、国会によって改正可能である。