【ジェンダー法学4-⑥】持参金殺人(インド)

 掲載:2015.07.03   執筆:三成美保

(1)インドのダウリー(持参金)

インドの「持参金殺人(ダウリー死)」は、「女性に対する暴力」の一つである。

インドの「ダウリー(ダヘーズ)」は、もとは北インドの一部のバラモンの慣習であった。それは、結婚にさいして新婦が新郎側に持参する財産であり、バラモンでよくある「上昇婚」(新婦の家族の地位が新郎のそれよりも劣位の場合に、持参金をもって嫁ぐことで自身の家族の地位を「上昇」させようとした)に対応したものであった。他方、下位カーストでは、新郎側が新婦に「婚資」をわたすのが一般的であった。しかし、下位カーストが上位カーストを模倣して、下位カーストにも「ダウリー」が広まった。また、南インドにも「ダウリー」が広まる(小林、160ページ)。

(2)持参金殺人(インド)

○ダウリー禁止法(1961年)

全インド国民に適用される法で、ダウリーの授受行為を禁止する。

○「ダウリー」の法的定義

ダウリー禁止法(1961年)では 「ダウリー(結婚持参金)」を次のように定義している。
「結婚の報酬として結婚時、結婚前、あるいは結婚後に、一方の集団がもう一方の集団に対して、または、双方の集団の両親かその他の人物が、双方の集団かその他の人物に対して、直接的であれ間接的であれ、贈与するか、贈与することが約束された、全ての財産、あるいは証券」(ただし、「イスラ-ム法 (シャリ-ア)が適用される人々の、ダウアーまたはマフル(mahr)はこれに含まれない」)(小林、164ページ)

○「ダウリー死」の発生件数

2010年:8391件(小林、166ページ)
※ダウリー禁止法にもかかわらず、増加傾向にある。

○「ダウリー死」の分布地図(人口10万人あたりの発生率:2012年)

人口10万人あたりの発生率の平均は0.7(2012年)。とくに北インドに多い。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Dowry_death#/media/File:2012_India_dowry_death_rate_per_100000_people_distribution_map_for_its_States_and_Union_Territories.svg

(3)ダウリー反対のキャンペーン(2006年)

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Dowry_system_in_India#/media/File:Say_no_to_dowry.jpg

(4)インドのDV被害女性保護法(2005年)

https://en.wikipedia.org/wiki/Protection_of_Women_from_Domestic_Violence_Act,_2005

○参考文献

小林磨理恵「インドにおける「結婚持参金(ダウリー)問題」の諸相」東京外国語大学リポジトリ http://repository.tufs.ac.jp/bitstream/10108/72851/1/ifa014010.pdf