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女性性器切除(FGM)/女子割礼(FC)
更新 2015.07.03 掲載2014.5.15 執筆:三成 美保
○用語
アフリカおよび中東では、女性性器の一部を切除・切開・縫合する慣行がある。この慣行の呼称には、「女子割礼(Female Circumcision=FC)」と「女性性器切除(Female Genital Mutilation=FGM)」の二つがある。
- 「女子割礼」は、「男子割礼」と並ぶ同等の伝統的な儀礼とする立場や文脈で使われる。
- 「女性性器切除」は、この慣行を非人道的な「暴力・虐待」としてとらえる立場や文脈で使われる。1990年に開催されたインター・アフリカン・コミッティ(IAC) の総会で、FGMの使用が決定された。現在、FGMは、EUやアフリカ連合で正式に利用されている。
- 国連総会で採択された「女性に対する暴力撤廃宣言」(1993年)では、FGM(女性性器切除)は「女性に対する暴力」の一つとされている。→*【ジェンダー法学4-②】(史料・法令)1993年:女性に対する暴力撤廃宣言
- 2003年7月11日、モザンビークの首都マプトにおいて、FGMを含めたあらゆる性暴力、性差別を禁じ、男女同権を定めた「人及び人民の権利に関するアフリカ憲章に関するマプト議定書 (Maputo Protocol) 」が採択された。
(1)女性性器切除の慣習が強い地域
図 Prevalence of female genital mutilation from UNICEF 2013.
WHOの定義によれば、女性性器切除あるいは女性割礼は、「女性外性器の一部もしくは全部の切除または女性外性器への医療以外の理由に基づくその他の損傷に関わるすべての行為」とされる。女性差別撤廃委員会一般勧告第14号(1990年)は、FGMを「女性の健康に有害な伝統的刊行」としてその根絶を求め、「女性に対する暴力撤廃宣言」(1993年)は、FGMを「女性に対する暴力」の1つとして例示した。アメリカでも移民立法の一部として反FGM法(1996年)が成立した。
FGMは、アフリカ28ヶ国、中近東やアジアの一部で慣習として行われている。一般に4~12歳の少女に対して実施され、被害女性は1億~1億3千万に達するといわれる。しかし、アフリカでは地域共同体からの疎外や結婚条件として不利になることを恐れて、娘にFGMを受けさせる親があとをたたない。また、FGM撤廃を欧米的価値観として批判し、むしろFGMを伝統文化として擁護する考え方も根強い。
→なお、アフリカのFGMをめぐる文化的問題については、【エッセイ】アフリカ事情雑感⑤「女子割礼」(富永智津子)を参照。
(2)国別比率(2014年)
Prevalence of female genital mutilation for 0–14 year olds from UNICEF, November 2014, table 9, pp. 84–89. SOWC
(3)FGM実施状況(UNICEFパンフレットより)
http://www.unicef.org/media/files/FGCM_Lo_res.pdf
(4)参考
【参考文献】富永智津子「「女子割礼」をめぐる研究動向――英語文献と日本語文献を中心に」『地域研究』第6巻第1号、2004年。
「アフリカ映画の父」と称されるウスマン・センベーヌ監督によるヒューマンドラマ。
西アフリカの小さな村。そこは古くからの伝統でFGMを行うしきたりがあった。しかしある日、4人の少女がFGMを嫌がって逃げ出したことをきっかけに、
少女たちのために母親たちが立ち上がる。