「女性活躍」策とその背景ー経済的効果(三成美保)

更新:2015-11-17 掲載:2015.01.11  執筆:三成美保

関連⇒*【労働①】ワーク・ライフ・バランス(2014年経済産業省資料から)
関連⇒2015-11-17【女性】女性活躍推進法

●「女性活躍」策の背景

  • 世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index=GGI)によると、日本の順位は2012年が135ヶ国中101位、2013年はさらに下がって105位であった*1(2014年は104位)。順位が低いのは、政治・経済分野での女性参画が阻まれているからである。このような社会は、はたして「持続可能な社会」といえるのだろうか。「持続可能な社会」をジェンダー視点で問う意義はここにある。
  • 3.11の大震災は、「持続可能性」を問うべき「環境・社会・経済」のすべてを危機に陥れた *2。未曾有の危機に直面して、政府が唱えたのが「再生戦略」や「成長戦略」である。「持続可能性」という文言は、それらの文脈で頻繁に登場する *3。さらに2013年以降、新たに「成長戦略の中核」として位置づけられるようになったのが、「女性活躍」策である。たとえば、2013年(平成25年)版の男女共同参画白書は、巻頭特集を「成長戦略の中核である女性の活躍に向けて」と銘打った。
  • 女性の積極的登用は、「ジェンダー平等」gender equalityの国際的潮流に即している*4 。しかし、「女性活躍」策をテコにした経済成長によって日本の「再生」をはかるというシナリオは、経済成長神話から抜け出ていない。また、経済面に偏った「女性活躍」策は、政治面での意思決定過程への参加から目をそらすことになり、「ジェンダー公正」gender justice(意思決定過程への対等な参画)の達成にはほど遠い。「持続可能な社会」づくりのために必要なのは、ジェンダー平等とジェンダー公正を両輪とする「ジェンダー主流化」gender mainstreamingである *5。

※注
*1  http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2012/201301/201301_04.html
*2  長谷部俊治・舩橋晴俊編『持続可能性の危機』御茶の水書房、2012年。
*3  2012年7月閣議決定「日本再生戦略」。
*4  川口章『ジェンダー経済格差』勁草書房、2008年、U.ベーニング、A.S.パスキュアル編(高木・麻生訳)『ジェンダー主流化と雇用戦略ーヨーロッパ諸国の事例』明石書店、2003年。
*5  二宮厚美『ジェンダー不平等の経済学』新日本出版社、2006年。

●【資料】成長戦略としての「女性の活躍」(2013年6月閣議決定「日本再興戦略」)

  • 「特に、これまで活かしきれていなかった我が国最大の潜在力である「女性の力」を最大限発揮できるようにすることは、少子高齢化で労働力人口の減少が懸念される中で、新たな成長分野を支えていく人材を確保していくためにも不可欠である。」http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

●【資料】「成長戦略としての女性活躍の推進」(2014年11月 経済産業省)

  • 「成長戦略としての女性活躍の推進」と銘打ち、「企業へのダイバーシティ研修等でご自由にお使いください。」として経済産業省が提供している資料。全文については⇒http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/
  • ≪目次≫
    • 我が国経済の「成長戦略」のための女性活躍推進
    • 企業の「成長戦略」のための女性活躍推進
    • 女性活躍に関する最近の政府の動き
    • 女性活躍推進に向けた経済産業省の取組

(1)国際比較

スライド4

スライド5

 

スライド6

スライド7

スライド8

スライド9

(2)経営効果

スライド13

スライド14

スライド15

●日本政府によるポジティブ・アクション政策(企業表彰)

●日本における「指導的立場」にいる女性の比率

zuhyo01-01-15

指導的立場にいる女性の割合(男女共同参画白書H23年度版)

  •  「国際的にみても低い水準にある我が国の状況
    以上見てきたとおり,政策・方針決定過程において「指導的地位」に占める女性の割合は緩やかに増加しているものの,その水準は依然として低く,政府が定める「2020年30%の目標」を達成していないものがほとんどである(第1-1-15図)。
    また,国際的には,2010(平成22)年に国連開発計画(UNDP)が発表した「人間開発報告 書」によると,日本は人間開発指数(HDI)が測定可能な169か国中11位であり,また,2010年に新たに作成・公表されたジェンダー不平等指数 (GII)は測定可能な138か国中12位となっている。一方,世界経済フォーラムが2010年に発表したジェンダー・ギャップ指数(GGI)は,測定可 能な134か国中94位となっている。
    GGIの順位はHDIやGIIの順位に比して著しく低く,我が国は,人間開発の達成度では実績を上げているが,女性が政治・経済活動に参画し,意思決定に参加する機会が不十分であることが分かる(第1-1-16表)。」(男女共同参画白書:H23年度版から引用)

●日本における企業の現状

repo1405-1(出典:松浦民恵:http://www.nli-research.co.jp/report/report/2014/05/repo1405-1.html

「企業における女性活用の変遷と今後の課題」(松浦民恵)2014年1月

(出典:松浦民恵「企業における女性活用の変遷と今後の課題」基礎研レポート、2014年5月:http://www.nli-research.co.jp/report/report/2014/05/repo1405-1.pdf)