【労働1】パートタイム労働

2015.02.11.掲載 三成 美保

●雇用形態の男女比較

  • 日本における女性労働の特徴は、①M字型就労、②非正規雇用者の比率の高さ、③男女の賃金格差である。
  • 女性では、2003(H15年)以降、非正規雇用が正規雇用を上回っている。男性の非正規雇用率も上昇しており、2割に近づいている。非正規雇用は、典型的には女性の問題であるが、いまや男性でも非正規雇用が増えており、男女を含めた「雇用崩壊」が深刻化している。同一価値労働についての非正規雇用の賃金は、正規雇用の半分である(※)。
    • ※フルタイム正社員とフルタイム非正社員の賃金を比べると、若いときには格差はさほど大きくないが、年齢が上がるとともに格差が拡大し、40歳代後半では、非正社員の給与水準は正社員の半分となる。
      【参考】浅尾裕「正規・非正規間の賃金格差から賃金を考える」(Business Labor Trend 2010.7)⇒http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2010/07/038-044.pdf
  • EUでは、パートタイム労働は「非典型労働」の一形態とされる(フルタイム労働が「典型労働」)。パートタイム労働は「短時間労働」をさし、日本のようにかならずしも「非正規労働」を意味するものではない。EU諸国の多くでは、1997年のEUパートタイム労働指令に参加して、同一価値労働同一賃金の原則がほぼ貫徹しており、フルタイムからパートタイムへ、あるいはその逆の労働移動に関する労働者の権利が保障されている。
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男女共同参画白書H26年版

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男女共同参画白書H26年版

●パートタイム労働

パートタイム労働条約(1994年・第175号)

  • 日本は、同条約を批准していない(2015年2月現在)。

1994年のパートタイム労働条約(第175号)について(国際労働機関HPから)

連合の見解

●EUの場合

EUにおける労働時間・非典型労働に関する規制

イギリスの場合

  • イギリスは、1997年に労働党政権が誕生するとEUの「パートタイム労働(均等待遇)指令に参加し、パートへの差別禁止を明文化した。2011年秋からは、一定の就業期間を経た派遣労働者に対し、正社員と同等の労働条件を保障した。
  • ダイヤモンド・オンライン・特別レポート2010年から引用
    (以下引用)「タムジン・シンヤさん(39歳)はその典型例だ。彼女には1歳と4歳の子どもがいる。バンビーニ・ナーサリーという日英バイリンガル教育を施す保育園・幼稚園はロンドンの中心から南西に30キロほど行ったところにある。彼女は現在そこで月、木、金とパートタイマーとして働いているが、その前はセントラル・ロンドンで語学学校のマネジャーとしてフルタイムの仕事をしていた。4年前に最初の娘が生まれたときにパートタイマーになった。
    「すぐにボスにパートタイマーにしてほしいと言いましたが、すぐに受け入れてくれました」
    フルタイマーのときは週に37.5時間働いていたが、パートタイマーになって週に21時間になった。収入は労働時間に正比例して減った。
    「キーワードは、pro rata(比例して)です」(シンヤさん)
    有能な人材を引き止めておくには、パートタイマーになったときに労働時間に比例して給料を減らすのが理にかなっており、賢明な策であるとシンヤさんは言う。一見当然のように聞こえるが、日本ではパートになると同一価値労働の場合、時給に換算すると半分くらいになってしまう。
    「今日は午後2時半まで働いて娘を引き取りに行き、そのまま帰宅します。収入はフルタイマーと比べると働く時間に比例します。子どもがある程度大きくなったら、またフルタイマーに戻りますが、フルタイマーとパートタイマーの間を自由に行ったり来たりできる、このフレキシビリティが最高です」
    日本ではパートタイマーになるとフルタイマーの時給の半分くらいになると説明するとタムジンさんはショックを受けた。「そんなに少なくなるのなら、働く価値はありません。女性も労働人口の重要な位置を占めているので、日本もイギリスを見習ってほしいです」有能な女性が家で家事だけをするのは、退屈だとタムジンさんは自分のことのように言う。「日本は先進国なのに、労働条件は後進国です」」(ダイヤモンド・オンライン・特別レポート2010年:全文についてはこちら⇒http://diamond.jp/articles/-/8306?page=4 )