【ジェンダー法学】男女共同参画社会・基本計画・男女共同参画白書

更新:2016-02-24 掲載:2014-03-08  作成:三成美保

(1)「男女共同参画社会」とは?

◆「男女共同参画社会」は、英語(内閣府による「男女共同参画社会基本法」の英訳)では、「Gender-Equal Society(ジェンダー平等社会・男女平等社会)」と記される(内閣府HP参照)。
男女共同参画社会基本法制定のあゆみ(内閣府HP)

◆男女共同参画 男女共同参画社会基本法(1999年)は、男女共同参画社会の基本理念を定める。前文は、男女共同参画社会の形成を「21世紀わが国社会を決定する最重要課題」とうたう。タイトルをめぐってはさまざまな議論があり、妥協の道が探られた。最終的に選ばれた男女共同参画という語には二つの側面がある。①政策・方針決定過程への男女の対等な参画を促す積極的な側面と、②平等アレルギーを避けるために「差別禁止」や「男女平等」という強い表現を避けたという消極的側面である。

◆男女共同参画基本計画 基本法にもとづき、2001年、内閣府に男女共同参画会議と専門調査会・男女共同参画局が設置された。男女共同参画基本計画は、第1次(2000年)、第2次(2005年)、第3次(2010年)と策定されている。第3次基本計画では、男性・子ども・複合差別の視点が新しく盛り込まれた。

◆条例 基本法が地方公共団体に積極的な取り組みを義務づけたのをうけ、2000年の出雲市、埼玉県、東京都を皮切りに、多くの地方公共団体が男女共同参画条例を制定している。制定状況は、2011年1月現在で46都道府県(千葉県以外のすべて)、19政令指定都市のすべて、463市町村(制定率27%)である。基本法が普遍主義的・形式主義的にとどまったのに対し、条例のなかには踏み込んだ規定をもつものも多い。例えば、埼玉県条例❶(2000年)は、「間接差別」の禁止や「性と生殖に関する健康と権利」を盛り込んでいる。東京都条例❷(2000年)は、「平等」という語を冠して先進的取り組みをはじめたが、審議会答申にはなかった「互いの違いを認めつつ」という文言が議会で突然挿入され、その後のいわゆるバックラッシュのさきがけとなった。「男女の特性を認め合い」と定め、専業主婦の尊重を唱える宇部市条例❸(2002年)はその典型である。

(執筆:三成美保2014.03.08/参考:三成他『ジェンダー法学入門』法律文化社、2011年)

◆史料・資料

→自治体における男女共同参画の取り組み(法的根拠)
男女共同参画社会基本法
第9条(地方公共団体の責務)地方公共団体は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

≪条例の例≫

❶埼玉県男女共同参画推進条例(2000年)
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/danjyo-suisinjourei/

第3条 男女共同参画の推進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が直接的であるか間接的であるかを問わず性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること、女性に対する暴力が根絶されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。 …五 男女共同参画の推進は、生涯にわたる性と生殖に関する健康と権利が尊重されることを旨として、行われなければならない。…

❷東京都男女平等参画基本条例(2000年)
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index8files/johrei/kihonjourei.pdfpdficon_large

(前文)男性と女性は、人として平等な存在である。男女は、互いの違いを認めつつ、個人の人権を尊重しなければならない。…

❸宇部市男女共同参画条例(2002年)
http://www.city.ube.yamaguchi.jp/kurashi/shiminjinken/danjokyoudou/jourei/index.html

第3条 本市における男女共同参画の推進は、次に掲げる事項を基本理念とする。
1.男女が、男らしさ女らしさを一方的に否定することなく男女の特性を認め合い、互いにその人格と役割を認めるとともに、尊厳を重んじ合うこと、男女が性別によって法の下の平等の原則に反する取り扱いを受けないこと、男女がその特性と能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人格的平等が尊重されるよう努めること。…
5.専業主婦を否定することなく、現実に家庭を支えている主婦を男女が互いに協力し、支援するよう配慮に努めること。…

❹千葉県

千葉県には男女共同参画条例はないが、男女共同参画課はある。http://www.pref.chiba.lg.jp/dankyou/

【参考】
●宇部市条例及び千葉県(2014年3月時点で男女共同参画条例がない唯一の都道府県)に対する日本女性学会による批判と問題提起(女性学会研究会報告) http://www.joseigakkai-jp.org/index.php?p=71

●2002年時点での問題状況について概観→橋本ヒロ子「男女平等条例制定の状況とその成果」(2002年) http://archive.dpj.or.jp/danjo/report/030311shiryo.html

(2)推進体制

●男女共同参画推進本部

本部長 内閣総理大臣
副本部長 内閣官房長官 内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
本部員 他のすべての国務大臣

●男女共同参画会議

内閣官房長官を議長とし、各省大臣等12名及び学識経験者12名の総計25名で構成。

●担当部署は、内閣府男女共同参画局 http://www.gender.go.jp/

●法令上の根拠「男女共同参画社会基本法」

①男女共同参画基本計画の策定→(国の責務)第八条 国は、第三条から前条までに定める男女共同参画社会の形成についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
②男女共同参画法制の整備→(法制上の措置等)第十一条  政府は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
③男女共同参画白書の作成→(年次報告等)第十二条  政府は、毎年、国会に、男女共同参画社会の形成の状況及び政府が講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての報告を提出しなければならない。 2  政府は、毎年、前項の報告に係る男女共同参画社会の形成の状況を考慮して講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

 

(3)関連法令

男女共同参画社会基本法(1999年)

→関連法律 http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/index.html

→英訳(内閣府):Basic Act for Gender-Equal Society
http://www.gender.go.jp/english_contents/about_danjo/lbp/laws/index.html

→内閣府男女共同参画局(英語版)http://www.gender.go.jp/english_contents/index.html

●自治体における男女共同参画関連の条令(制定状況)
http://www1.ubc.ne.jp/~jichisoken/archive/gender/index.html

(4)男女共同参画基本計画

第4次男女共同参画基本計画(2015年)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/4th/

第4次男女共同参画基本計画(概要)PDF 全3ページ
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/4th/pdf/gaiyo.pdfpdficon_large

クリックしてgaiyo.pdfにアクセス

第3次男女共同参画基本計画(2010年)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/3rd/index.html

第3次男女共同参画基本計画の概要 PDF 2ページ
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/3rd/pdf/3-24.pdfpdficon_large

クリックして3-24.pdfにアクセス

第2次男女共同参画基本計画(2005年)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/2nd/index2.html

概要→http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/2nd/pdf/gaiyou.pdfpdficon_large

(第1次)男女共同参画基本計画(2000年)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/1st/index.html

(5)男女共同参画白書 

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html

概要版 全体版 特集編/序説 テーマ
平成27年6月 平成27年6月 地域の活力を高める女性の活躍
平成26年6月 平成26年6月 変わりゆく男性の仕事と暮らし
平成25年6月 平成25年6月 成長戦略の中核である女性の活躍に向けて
平成24年6月 平成24年6月 男女共同参画の視点からの防災・復興
平成23年6月 平成23年6月 ポジティブ・アクションの推進
-「2020年30%」に向けて-
平成22年6月 平成22年6月 女性の活躍と経済・社会の活性化
平成21年5月 平成21年6月 男女共同参画の10年の軌跡と今後に向けての視点
−男女共同参画社会基本法施行から10年を迎えて−
平成20年6月 平成20年6月 地域における女性の活躍
−実践的活動から進化する男女共同参画−
平成19年6月 平成19年6月 国際比較でみた男女共同参画の状況
平成18年6月 平成18年6月 女性が再チャレンジしやすい社会へ男女共同参画と少子化対策は車の両輪
平成17年6月 平成17年6月 科学技術の進展と男女共同参画
平成16年6月 平成16年6月 男女共同参画社会へのあゆみと現状
平成15年6月 平成15年6月 国際比較でみた男女共同参画社会の状況
平成14年6月 平成14年6月 都道府県別にみた男女共同参画社会の形成の状況
- 平成13年6月 男女共同参画社会の実現に向けて
~21世紀を豊かで活力あるものとするために~
平成9年7月
(報道発表資料)

参考文献

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