【史料・解説】女性差別撤廃条約(1979年)(三成美保)

2021-02-21更新(執筆:三成美保/初出:三成他『ジェンダー法学入門』2011、一部加筆修正)

女性差別撤廃条約「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」
(Convention on the Elimination of all Forms of Discrimination against Women) (公定訳:全文)

(注)※マーカー箇所は三成による補足箇所。※マーカー箇所は重要箇所。

(前文)

この条約の締約国は,

国際連合憲章が基本的人権,人間の尊厳及び価値並びに男女の権利の平等に関する信念を改めて確認していることに留意し,

世界人権宣言が,差別は容認することができないものであるとの原則を確認していること,並びにすべての人間は生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳及び権利について平等であること並びにすべての人は性による差別その他のいかなる差別もなしに同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明していることに留意し,

人権に関する国際規約の締約国がすべての経済的,社会的,文化的,市民的及び政治的権利の享有について男女に平等の権利を確保する義務を負っていることに留意し,

国際連合及び専門機関の主催の下に各国が締結した男女の権利の平等を促進するための国際条約を考慮し,

更に,国際連合及び専門機関が採択した男女の権利の平等を促進するための決議,宣言及び勧告に留意し,

しかしながら,これらの種々の文書にもかかわらず女子に対する差別が依然として広範に存在していることを憂慮し,

女子に対する差別は,権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものであり,女子が男子と平等の条件で自国の政治的,社会的,経済的及び文化的活動に参加する上で障害となるものであり,社会及び家族の繁栄の増進を阻害するものであり,また,女子の潜在能力を自国及び人類に役立てるために完全に開発することを一層困難にするものであることを想起し,

窮乏の状況においては,女子が食糧,健康,教育,雇用のための訓練及び機会並びに他の必要とするものを享受する機会が最も少ないことを憂慮し,

衡平及び正義に基づく新たな国際経済秩序の確立が男女の平等の促進に大きく貢献することを確信し,

アパルトヘイト,あらゆる形態の人種主義,人種差別,植民地主義,新植民地主義,侵略,外国による占領及び支配並びに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し,

国際の平和及び安全を強化し,国際緊張を緩和し,すべての国(社会体制及び経済体制のいかんを問わない。)の間で相互に協力し,全面的かつ完全な軍備縮小を達成し,特に厳重かつ効果的な国際管理の下での核軍備の縮小を達成し,諸国間の関係における正義,平等及び互恵の原則を確認し,外国の支配の下,植民地支配の下又は外国の占領の下にある人民の自決の権利及び人民の独立の権利を実現し並びに国の主権及び領土保全を尊重することが,社会の進歩及び発展を促進し,ひいては,男女の完全な平等の達成に貢献することを確認し,

国の完全な発展,世界の福祉及び理想とする平和は,あらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としていることを確信し,

(固定的性役割の否定)家族の福祉及び社会の発展に対する従来完全には認められていなかった女子の大きな貢献,母性の社会的重要性並びに家庭及び子の養育における両親の役割に留意し,また,出産における女子の役割が差別の根拠となるべきではなく,子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要であることを認識し,

社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割とともに変更することが男女の完全な平等の達成に必要であることを認識し,

女子に対する差別の撤廃に関する宣言に掲げられている諸原則を実施すること及びこのために女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃するための必要な措置をとることを決意して,

次のとおり協定した。

第1部(総論)

第1条(「女性に対する差別」の定義)

この条約の適用上,「女子に対する差別」とは,性に基づく区別,排除又は制限であつて,政治的,経済的,社会的,文化的,市民的その他のいかなる分野においても,女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し,享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。

第2条(個人や社会慣行による性差別の撤廃も規定)

締約国は,女子に対するあらゆる形態の差別を非難し,女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により,かつ,遅滞なく追求することに合意し,及びこのため次のことを約束する。

  • (a) 男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め,かつ,男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。
  • (b) 女子に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること。
  • (c) 女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し,かつ,権限のある自国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保すること。
  • (d) 女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え,かつ,公の当局及び機関がこの義務に従って行動することを確保すること。
  • (e) 個人,団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
  • (f) 女子に対する差別となる既存の法律,規則,慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
  • (g) 女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。
第3条

締約国は,あらゆる分野,特に,政治的,社会的,経済的及び文化的分野において,女子に対して男子との平等を基礎として人権及び基本的自由を行使し及び享有することを保障することを目的として,女子の完全な能力開発及び向上を確保するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。

第4条(※【解説】1項は、暫定的特別措置=ポジティブ・アクションに法的根拠を与える。2項は永続的特別措置=母性保護を定める。)
  • 締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは,この条約に定義する差別と解してはならない。ただし,その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず,これらの措置は,機会及び待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない。

  • 締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとることは,差別と解してはならない。

第5条(固定的な性役割の否定)

締約国は,次の目的のためのすべての適当な措置をとる。

  • (a) 両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため,男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。

  • (b) 家庭についての教育に,社会的機能としての母性についての適正な理解並びに子の養育及び発育における男女の共同責任についての認識を含めることを確保すること。あらゆる場合において,子の利益は最初に考慮するものとする。

第6条

締約国は,あらゆる形態の女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。

第2部(公的生活)

第7条

締約国は,自国の政治的及び公的活動における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,女子に対して男子と平等の条件で次の権利を確保する。

  • (a) あらゆる選挙及び国民投票において投票する権利並びにすべての公選による機関に選挙される資格を有する権利
  • (b) 政府の政策の策定及び実施に参加する権利並びに政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する権利
  • (c) 自国の公的又は政治的活動に関係のある非政府機関及び非政府団体に参加する権利
第8条

締約国は,国際的に自国政府を代表し及び国際機関の活動に参加する機会を,女子に対して男子と平等の条件でかついかなる差別もなく確保するためのすべての適当な措置をとる。

第9条(※【解説】日本は本条約批准のために父系血統主義をとる国籍法を改正する必要があった)
  • 締約国は,国籍の取得,変更及び保持に関し,女子に対して男子と平等の権利を与える。締約国は,特に,外国人との婚姻又は婚姻中の夫の国籍の変更が,自動的に妻の国籍を変更し,妻を無国籍にし又は夫の国籍を妻に強制することとならないことを確保する。

  • 締約国は,子の国籍に関し,女子に対して男子と平等の権利を与える。

第3部(社会生活)

第10条(※【解説】日本は本条約批准のために家庭科を男女共修にする必要があった)

締約国は,教育の分野において,女子に対して男子と平等の権利を確保することを目的として,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保することを目的として,女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。

  • (a) 農村及び都市のあらゆる種類の教育施設における職業指導,修学の機会及び資格証書の取得のための同一の条件。このような平等は,就学前教育,普通教育,技術教育,専門教育及び高等技術教育並びにあらゆる種類の職業訓練において確保されなければならない。
  • (b) 同一の教育課程,同一の試験,同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一の質の学校施設及び設備を享受する機会
  • (c) すべての段階及びあらゆる形態の教育における男女の役割についての定型化された概念の撤廃を,この目的の達成を助長する男女共学その他の種類の教育を奨励することにより,また,特に,教材用図書及び指導計画を改訂すること並びに指導方法を調整することにより行うこと。
  • (d) 奨学金その他の修学援助を享受する同一の機会
  • (e) 継続教育計画(成人向けの及び実用的な識字計画を含む。)特に,男女間に存在する教育上の格差をできる限り早期に減少させることを目的とした継続教育計画を利用する同一の機会
  • (f) 女子の中途退学率を減少させること及び早期に退学した女子のための計画を策定すること。
  • (g) スポーツ及び体育に積極的に参加する同一の機会
  • (h) 家族の健康及び福祉の確保に役立つ特定の教育的情報(家族計画に関する情報及び助言を含む。)を享受する機会
第11条(※【解説】日本は本条約批准のために男女雇用機会均等法を制定する必要があった)
  • 締約国は,男女の平等を基礎として同一の権利,特に次の権利を確保することを目的として,雇用の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。

    • (a) すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利
    • (b) 同一の雇用機会(雇用に関する同一の選考基準の適用を含む。)についての権利
    • (c) 職業を自由に選択する権利,昇進,雇用の保障並びに労働に係るすべての給付及び条件についての権利並びに職業訓練及び再訓練(見習,上級職業訓練及び継続的訓練を含む。)を受ける権利
    • (d) 同一価値の労働についての同一報酬(手当を含む。)及び同一待遇についての権利並びに労働の質の評価に関する取扱いの平等についての権利
    • (e) 社会保障(特に,退職,失業,傷病,障害,老齢その他の労働不能の場合における社会保障)についての権利及び有給休暇についての権利
    • (f) 作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保護を含む。)についての権利
  • 締約国は,婚姻又は母性を理由とする女子に対する差別を防止し,かつ,女子に対して実効的な労働の権利を確保するため,次のことを目的とする適当な措置をとる。

    • (a) 妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているかいないかに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止すること。
    • (b) 給料又はこれに準ずる社会的給付を伴い,かつ,従前の雇用関係,先任及び社会保障上の利益の喪失を伴わない母性休暇を導入すること。
    • (c) 親が家庭責任と職業上の責務及び社会的活動への参加とを両立させることを可能とするために必要な補助的な社会的サービスの提供を,特に保育施設網の設置及び充実を促進することにより奨励すること。
    • (d) 妊娠中の女子に有害であることが証明されている種類の作業においては,当該女子に対して特別の保護を与えること。
  • この条に規定する事項に関する保護法令は,科学上及び技術上の知識に基づき定期的に検討するものとし,必要に応じて,修正し,廃止し,又はその適用を拡大する。

第12条
  • 締約国は,男女の平等を基礎として保健サービス(家族計画に関連するものを含む。)を享受する機会を確保することを目的として,保健の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。

  • 1の規定にかかわらず,締約国は,女子に対し,妊娠,分べん及び産後の期間中の適当なサービス(必要な場合には無料にする。)並びに妊娠及び授乳の期間中の適当な栄養を確保する。

第13条

締約国は,男女の平等を基礎として同一の権利,特に次の権利を確保することを目的として,他の経済的及び社会的活動の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。

  • (a) 家族給付についての権利
  • (b) 銀行貸付け,抵当その他の形態の金融上の信用についての権利
  • (c) レクリエーション,スポーツ及びあらゆる側面における文化的活動に参加する権利
第14条
  • 締約国は,農村の女子が直面する特別の問題及び家族の経済的生存のために果たしている重要な役割(貨幣化されていない経済の部門における労働を含む。)を考慮に入れるものとし,農村の女子に対するこの条約の適用を確保するためのすべての適当な措置をとる。

  • 締約国は,男女の平等を基礎として農村の女子が農村の開発に参加すること及びその開発から生ずる利益を受けることを確保することを目的として,農村の女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,これらの女子に対して次の権利を確保する。

    • (a) すべての段階における開発計画の作成及び実施に参加する権利
    • (b) 適当な保健サービス(家族計画に関する情報,カウンセリング及びサービスを含む。)を享受する権利
    • (c) 社会保障制度から直接に利益を享受する権利
    • (d) 技術的な能力を高めるために,あらゆる種類(正規であるかないかを問わない。)の訓練及び教育(実用的な識字に関するものを含む。)並びに,特に,すべての地域サービス及び普及サービスからの利益を享受する権利
    • (e) 経済分野における平等な機会を雇用又は自営を通じて得るために,自助的集団及び協同組合を組織する権利
    • (f) あらゆる地域活動に参加する権利
    • (g) 農業信用及び貸付け,流通機構並びに適当な技術を利用する権利並びに土地及び農地の改革並びに入植計画において平等な待遇を享受する権利
    • (h) 適当な生活条件(特に,住居,衛生,電力及び水の供給,運輸並びに通信に関する条件)を享受する権利

第4部(私的生活)

第15条
  • 締約国は,女子に対し,法律の前の男子との平等を認める。

  • 締約国は,女子に対し,民事に関して男子と同一の法的能力を与えるものとし,また,この能力を行使する同一の機会を与える。特に,締約国は,契約を締結し及び財産を管理することにつき女子に対して男子と平等の権利を与えるものとし,裁判所における手続のすべての段階において女子を男子と平等に取り扱う。

  • 締約国は,女子の法的能力を制限するような法的効果を有するすべての契約及び他のすべての私的文書(種類のいかんを問わない。)を無効とすることに同意する。

  • 締約国は,個人の移動並びに居所及び住所の選択の自由に関する法律において男女に同一の権利を与える。

第16条
  • 締約国は,婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保する。

    • (a) 婚姻をする同一の権利
    • (b) 自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利
    • (c) 婚姻中及び婚姻の解消の際の同一の権利及び責任
    • (d) 子に関する事項についての親(婚姻をしているかいないかを問わない。)としての同一の権利及び責任。あらゆる場合において,子の利益は至上である。
    • (e) 子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報,教育及び手段を享受する同一の権利
    • (f) 子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に係る同一の権利及び責任。あらゆる場合において,子の利益は至上である。
    • (g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
    • (h) 無償であるか有償であるかを問わず,財産を所有し,取得し,運用し,管理し,利用し及び処分することに関する配偶者双方の同一の権利
  • 児童の婚約及び婚姻は,法的効果を有しないものとし,また,婚姻最低年齢を定め及び公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置(立法を含む。)がとられなければならない。

第5部(女性差別撤廃委員会(CEDAW))

第17条
  • この条約の実施に関する進捗状況を検討するために,女子に対する差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は,この条約の効力発生の時は18人の,35番目の締約国による批准又は加入の後は23人の徳望が高く,かつ,この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。委員は,締約国の国民の中から締約国により選出するものとし,個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては,委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

  • 委員会の委員は,締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は,自国民の中から1人を指名することができる。

  • 委員会の委員の最初の選挙は,この条約の効力発生の日の後6箇月を経過した時に行う。国際連合事務総長は,委員会の委員の選挙の日の遅くとも3箇月前までに,締約国に対し,自国が指名する者の氏名を2箇月以内に提出するよう書簡で要請する。同事務総長は,指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し,締約国に送付する。

  • 委員会の委員の選挙は,国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。この会合は,締約国の3分の2をもって定足数とする。この会合においては,出席し,かつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で,かつ,過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。

  • 委員会の委員は,4年の任期で選出される。ただし,最初の選挙において選出された委員のうち9人の委員の任期は,2年で終了するものとし,これらの9人の委員は,最初の選挙の後直ちに,委員会の委員長によりくじ引で選ばれる。

  • 委員会の5人の追加的な委員の選挙は,35番目の批准又は加入の後,2から4までの規定に従って行う。この時に選出された追加的な委員のうち2人の委員の任期は,2年で終了するものとし,これらの2人の委員は,委員会の委員長によりくじ引で選ばれる。

  • 締約国は,自国の専門家が委員会の委員としての職務を遂行することができなくなった場合には,その空席を補充するため,委員会の承認を条件として自国民の中から他の専門家を任命する。

  • 委員会の委員は,国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い,同総会の承認を得て,国際連合の財源から報酬を受ける。

  • 国際連合事務総長は,委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第18条
  • 締約国は,次の場合に,この条約の実施のためにとった立法上,司法上,行政上その他の措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する報告を,委員会による検討のため,国際連合事務総長に提出することを約束する。

    • (a) 当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から1年以内
    • (b) その後は少なくとも4年ごと,更には委員会が要請するとき。
  • 報告には,この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。

第19条
  • 委員会は,手続規則を採択する。

  • 委員会は,役員を2年の任期で選出する。

第20条
  • 委員会は,第18条の規定により提出される報告を検討するために原則として毎年2週間を超えない期間会合する。

  • 委員会の会合は,原則として,国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。

第21条
  • 委員会は,その活動につき経済社会理事会を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし,また,締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は,締約国から意見がある場合にはその意見とともに,委員会の報告に記載する。

  • 国際連合事務総長は,委員会の報告を,情報用として,婦人の地位委員会に送付する。

第22条
  • 専門機関は,その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し,代表を出す権利を有する。委員会は,専門機関に対し,その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。

第6部(最終条項)

第23条
  • この条約のいかなる規定も,次のものに含まれる規定であって男女の平等の達成に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。

    • (a) 締約国の法令
    • (b) 締約国について効力を有する他の国際条約又は国際協定
第24条
  • 締約国は,自国においてこの条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとることを約束する。

第25条
  • この条約は,すべての国による署名のために開放しておく。

  • 国際連合事務総長は,この条約の寄託者として指定される。

  • この条約は,批准されなければならない。批准書は,国際連合事務総長に寄託する。

  • この条約は,すべての国による加入のために開放しておく。加入は,加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。

第26条
  • いずれの締約国も,国際連合事務総長にあてた書面による通告により,いつでもこの条約の改正を要請することができる。

  • 国際連合総会は,1の要請に関してとるべき措置があるときは,その措置を決定する。

第27条
  • この条約は,20番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。

  • この条約は,20番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については,その批准書又は加入書が寄託された日の後30日目の日に効力を生ずる。

第28条
  • 国際連合事務総長は,批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し,かつ,すべての国に送付する。

  • この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は,認められない。

  • 留保は,国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし,同事務総長は,その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は,受領された日に効力を生ずる。

第29条
  • この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは,いずれかの紛争当事国の要請により,仲裁に付される。仲裁の要請の日から6箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には,いずれの紛争当事国も,国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。

  • 各締約国は,この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に,1の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は,そのような留保を付した締約国との関係において1の規定に拘束されない。

  • 2の規定に基づいて留保を付した締約国は,国際連合事務総長にあてた通告により,いつでもその留保を撤回することができる。

第30条
  • この条約は,アラビア語,中国語,英語,フランス語,ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし,国際連合事務総長に寄託する。

    以上の証拠として,下名は,正当に委任を受けてこの条約に署名した。

ただし、マーカーや文字の色づけ、解説は三成による。

解説

◆条約の批准国数

2020年2月現在:189カ国

◆女性差別撤廃条約の「発展・変容」

女性差別撤廃条約は「発展・変容」している。同条約は1979年に成立したが、その後の国際社会の変化にあわせて、二つの方向で条約の補充がなされてきた。一つは一般勧告、もう一つは女性差別撤廃条約選択議定書の成立である。

一般勧告12号と同19号は「女性に対する暴力」を定めた。「女性に対する暴力」の規定は、女性差別撤廃条約にはない。一般勧告12号(1989年)が「女性に対する暴力」の最初の一般勧告であるが、より具体的・詳細な内容をもつのは一般勧告19号(1992年)である。

【法学4】女性に対する暴力/ジェンダーに基づく暴力

◆国連と日本の動き(『男女共同参画白書』H23年版)

国際女性(婦人)年以降の国内外の動き(年表)(出典:http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/pamphlet/pdf/renkei2013_6.pdf)

renkei2013_6

◆女性差別撤廃条約 

女性差別廃止のためのもっとも基本的な条約が、女性差別撤廃条約(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約:全30条:1979年)である。国連女性の地位委員会は、女性差別撤廃宣言❶(1967年)を条約に発展させるべく、74年から草案作りをはじめた。79年の第34回国連総会で、賛成130の圧倒的多数を得て、女性差別撤廃条約が採択された。2009年5月現在で締約国186国、署名国98国である。同条約は、前文(15パラグラフ)と本文30カ条(6部構成)からなる。第1部総論(1~6条)、第2部公的生活(7~9条)、第3部社会生活(10~14条)、第4部私的生活(15~16条)、第5部女性差別撤廃委員会(CEDAW)(17~22条)、第6部最終条項(23~30条)である。「女性に対する差別」は、第1条に定義されている。

女性差別撤廃条約は次のような3つの特徴をもつ。①男女の固定的な性役割を否定している(前文第14パラグラフ、第5条)。②個人や社会慣行による性差別の撤廃をも求めている(第2条)。③ポジティブ・アクションを肯定している(第4条)。

◆日本の法改正

日本は、女性差別撤廃条約を1980年に署名、85年に批准した(72番目)。批准にあたって3つの改革を行った。①国籍法の改正(父系血統主義から父母両系主義へ/外国人配偶者の国籍を男女平等へ)、②学習指導要領の改訂(高校家庭科を女子のみ必修から男女の選択必修へ)、③男女雇用機会均等法の制定である。

◆選択議定書 

1999年、女性差別撤廃条約選択議定書(「54/4 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約選択議定書」が採択された(→発効に関する国連のプレスリリース:2000年)。二つの新しい制度が定められ、条約を守らせる力が飛躍的に高まった。個人通報制度(権利を侵害された個人が国内法で救済されない場合に直接CEDAWに申し立てができる)と調査制度(条約に対する重大または組織的侵害があるという確かな情報を受け取った場合にCEDAWが調査できる)である。日本はこれを批准していない。 (M)

資料・史料

①女性差別撤廃条約

女性差別撤廃条約の成立・批准経過 (内閣府男女共同参画局HP)

女性差別撤廃条約(全文)(1979年)(内閣府男女共同参画局HP)

②女性差別撤廃条約選択議定書

女性差別撤廃条約選択議定書(全文)(1999年)

女性差別撤廃条約選択議定書の発効に関する国連のプレスリリース(国連広報センター:2000年)

●女性差別撤廃条約選択議定書批准国(国連・随時更新)
2015年1月現在:批准国は105国(日本は未批准)。
https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=IV-8-b&chapter=4&lang=en

2020年2月現在:113カ国が批准(日本は未批准)