【改革提案③】高等学校の歴史教育改革アンケートへのご協力のお願い(2014年6月実施)
高等学校歴史教育研究会
2006年秋に高校で必修である世界史を他の科目で代替していた問題が発覚して以来、各方面で高校における歴史教育改革の検討が進められてきました。この世界史未履修問題が発生した背景には様々な要因があるといわれていますが、世界史は高校で初めて本格的に習う上、覚えるべき用語が多く、生徒たちに苦手意識があること。また、高校では週休2日制が導入された上、「総合学習」や「情報」などの新科目が設置され、地歴科関係の授業時間が縮小していること。さらに、小中学校の社会科(歴史分野)では日本史中心の教育が行われているため、大学進学を考える生徒の中では日本史での受験を希望する生徒が多く、世界史の必修を負担に考える傾向があること、などが指摘されています。
このような世界史未履修問題の表面化をうけて、日本学術会議では歴史と地理の専門家による分科会が設置され、2011年8月に『新しい高校地理・歴史教育の創造―グローバル化に対応した時空間認識の育成―』を提言しました。この中では、世界史Aと日本史Aを統合した「歴史基礎」と地理Aを改編した「地理基礎」を必修とするとともに、受験の中心科目である世界史Bと日本史Bに関しては歴史的思考力の育成を強化するため、用語を2000語程度に限定するガイドラインを作成し、大学側もその範囲で入試問題を出題するように提案しました(www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t130-2.pdf)。
この提言を受け、世界史Bと日本史Bの用語を限定する試案を作成するため、2012年10月から日本学術会議の提言作成に関わったメンバーを中心として高等学校歴史教育研究会が三菱財団人文科学研究助成金を得て、高校教員と大学教員5名ずつの構成で発足しました。この間、小中学校社会科(歴史分野)の歴史用語、高校世界史A・日本史Aの用語、世界史B・日本史Bの用語(ゴシック用語も含む)の教科書ごとの収録頻度、大学入試センター試験の出題用語などの基礎データを作成し、歴史教育における小中高大の積み上げの中で高校の世界史Bや日本史Bにおける重要用語を限定するガイドラインの試案を作成してきました。この基礎データと検討結果は、高校歴史教育研究会と協力関係にある世界史研究所(南塚信吾代表)のホームページに次のアドレスで掲載してあります。
http://www.history.l.chiba-u.jp/~riwh/japanese/index.php?itemid=214
この調査結果によると、大学受験の中心科目である世界史Bと日本史Bに関しては、改訂の度に用語が膨らむ傾向が続いており、1950年代初めには1200~1500語程度であったものが、最新の2012年度検定の教科書では3500~3800語程度に膨張しています。これは歴史学の発展により新しい研究成果を盛り込む努力の現れという面もありますが、高校の歴史教育で確保される時間数が減少してきているため、高校現場では近現代史まで教えらずに終わるケースが増えているといわれます。
また、一部の大学入試では細かい用語の暗記力を問う出題が続いているため、高校現場ではひたすら用語の暗記を生徒に強いる教育に追われ、生徒に歴史の面白さを伝え、歴史的思考力の育成を図る授業が行えない状況が続いています。その結果、生徒たちの間では歴史学習は暗記科目で、自分の将来には関係ないとして「歴史離れ」する傾向があり、大学進学後の学習に高校の歴史教育が役立っていない傾向も出ているといわれます。
他方、文部科学省では、2008年度の学習指導要領の改訂にあたり、新科目の検討も議論になったようですが、時間不足から当面、世界史必修が継続されました。その後、2018年ごろに予定される次の学習指導要領の改訂に向けて、研究開発学校などで歴史基礎・地理基礎など新科目の実験も進行しています。しかし、最近では高校でも日本史を必修にする案が浮上しており、もし、世界史必修を止めて、日本史のみを必修にした場合には高校における世界史履修者の激減が予想され、グローバル化時代に逆行することになりかねません。
このように現在は、高校の歴史教育の在り方を検討する上で重要な岐路に差し掛かっていると考えられます。そこで、高等学校歴史教育研究会、日本学術会議高校歴史教育分科会、日本歴史学協会歴史教育特別委員会では、協議の末、高校の歴史教育や大学入試の在り方を検討するアンケートを多くの関係者にお願いし、改革の基本方向を検討する参考にさせていただきたいと考えました。
このアンケートへの回答は、2014年8月末までに下記あてに郵送または電子データでお送りくださるようにお願いします。また、できるだけ多くの方にアンケートにお答えいただくためにアンケートに協力いただけそうな方を下記あてにご紹介ください。なお、アンケートに記入いただく際には、回答者の皆さんの高校歴史教育との具体的な関係と回答内容の相関を知りたいと考え、記名回答をお願いします。勿論、無記名を希望される場合は氏名欄の無記入でも構いません。また、アンケート結果は、9月末までに集計し公表する予定ですが、発表にあたっては回答者のお名前を公表することは致しませんので、ご自由に回答くださるようにお願いします。
2014年6月20日
高等学校歴史教育研究会
代表 油井大三郎
日本学術会議高校歴史教育分科会
委員長 久保 亨
日本歴史学協会歴史教育特別委員会
委員長 近藤一成
送付先:
郵送の場合 167-8585 杉並区善福寺2-6-1
東京女子大学現代教養学部 油井大三郎 宛
メールの場合 yui@lab.twcu.ac.jp
高等学校における世界史・日本史教育に関するアンケート
回答方法
1.カッコ内の該当するものを選んで○で囲んでください。
2.5段階( 5 4 3 2 1 ) という回答欄には、(5)強くそう思う、(4)そう思う、(3)どちらとも言えない、(2)そう思わない、(1)全くそう思わない、のいずれかの該当する数字を○で囲んでください。
3.その他の自由回答欄にはスペースの範囲内であなたの考えを自由に書いてください。
1 回答のお立場 a)個人 b)学会・研究会・出版社などを代表
b)を選択された場合、その団体名( )
2 記名 ご氏名 3 ご所属
無記名
4 高校歴史教育との関わり
i)高校で担当の場合 科目名 担当年数
ii) 高校歴史教科書執筆の場合 科目名 執筆年次
iii) 高校歴史教科書出版の場合 科目名 担当年数
iv) 大学で歴史教育に関係の場合 科目名 担当年数
v)その他( )
5 現在の高校歴史教育が抱える問題点をどうお考えですか。
i)歴史系科目に対する生徒の関心・興味が低いこと→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
ii) 大学入試への対応に追われていること→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iii) 大学入試の影響で用語の暗記中心の授業形態になっていること
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iv) 生徒の思考力を育成する授業が十分実施できないこと
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
v)その他( )
6 上記の問題点を解決する方法は何だとお考えですか。
i)歴史系科目に対する生徒の関心・興味を引き出せる教授法に転換すべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
ii) 大学に進学しない生徒のことも考えて市民的教養としての歴史教育を重視すべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iii) 大学側が細かい用語の暗記力ではなく、歴史的思考力を試す出題に代えるべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iv) 歴史系科目を担当する高校教員の思考力育成型の教授力をもっと強化すべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
v) その他( )
7 2006年秋に表面化した世界史未履修問題の解決策としてどれが適当とお考えですか。
i)世界史必履修を徹底させて再発を防ぐべき → 5段階( 5 4 3 2 1 )
ii) 世界史のみの必履修には無理があるので、世界史・日本史の統合科目を新設すべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iii) 世界史・日本史・地理を統合した新科目を設置すべき
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iv) 日本史のみの必履修に代えるべき → 5段階( 5 4 3 2 1 )
v) その他( )
8 改訂の度に高校の歴史教科書の用語数が増加している傾向についてどうお考えですか。
i)歴史研究の進展の結果として当然 → 5段階( 5 4 3 2 1 )
ii) 高校での授業時間の制約を考え用語の限定が必要 → 5段階( 5 4 3 2 1 )
iii) その他( )
9 8-iiで用語の限定が必要とされた(5段階評価で5、4を選択された)場合、高校の世界史Bと日本史Bにおける適当な用語数は次のどれとお考えですか。
i)3000語程度 ii) 2500語程度 iii) 2000語程度 iv) 1500語程度
v)1000語程度
vi) その他( )
10 大学入試で出題する用語数を限定しないと、高校で全時代の教育を修了したり、思考力育成型の授業を増やしたりはできないとの意見をどうお考えですか。
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
11 10で限定が必要とされた(5段階で5,4を選択された)場合、大学入試で限定すべき用語数は次のどれとお考えですか。
i)3000語程度 ii) 2500語程度 iii) 2000語程度 iv) 1500語程度
v) 1000語程度
vi) その他( )
12 歴史教育における高校と大学の接続に関しての問題点をどうお考えでしょうか。
i)高校までの授業で受けた歴史知識が大学に入る時点までに定着していないこと
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
ii) 高校までに受けた歴史系授業が思考力育成に結び付いていないため、大学教育との接続がうまくいかないこと → 5段階( 5 4 3 2 1 )
iii) 高校時代に歴史系の科目を履修しないで大学に進学する学生が増えているため、歴史系の補修授業を大学でする必要に迫られていること
→ 5段階( 5 4 3 2 1 )
iv) その他( )
13 その他、高校の歴史教育改革に関連してご意見があれば、ご自由に記入してください。
資料1 略
資料2 略