目次
ボローニャ・プロセス、エラスムス計画
掲載:2016-07-11 作成:三成美保
【解説】ボローニャ・プロセスとエラスムス計画
「ボローニャ・プロセス」とは、ボローニャ宣言(1999年)から始まった欧州における高等教育システムの改革に関する一連の流れを指す。「エラスムス計画」は、1987年に開始されたものであり、EUの学生が他国の高等教育機関へ留学や企業への研修ができるよう支援するプログラムをさす。エラスムス計画は、ボローニャ・プロセスの開始や欧州単位互換制度(ECTS)の創設に重要な役割を果たしており、エラスムス計画の成功がエラスムス・ムンドゥスの開始につながった。
(1)ボローニャ・プロセスに関する主な合意文書・宣言
1997年 | リスボン認証条約 |
1999年 | ボローニャ宣言 |
2001年 | プラハ・コミュニケ |
2003年 | ベルリン・コミュニケ |
2005年 | ベルゲン・コミュニケ |
2007年 | ロンドン・コミュニケ |
2009年 | ルーヴァン・コミュニケ |
2010年 | ブダペスト・ウィーン宣言 |
2012年 | ブカレスト・コミュニケ |
○ボローニャ宣言
正式名称 | Bologna Declaration |
策定主体 | 欧州高等教育大臣会合 |
策定(実施)年 | 1999年 |
概略 |
1999年6月19日にイタリアのボローニャで、欧州29か国の高等教育担当大臣が調印 した宣言。2010年までの欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)の確立に向けて、主に以下の課題の達成に努力することで各国の大臣が署名した。なお、「ボローニャ・プロセス」とは、本宣言から始まった欧州に おける高等教育システムの改革に関する、一連の流れを指す。 <ボローニャ宣言の要旨>
本宣言で提唱されたプロセス達成に向けて、2001年から2年ごとに大臣会合を開催。改革内容の進捗プロセスの把握や活動方針の追加が行われ、 会議ごとに共同声明(コミュニケ)が発表されている。2009年からは大臣会合と合わせて、ボローニャ参加国と日本を含むその他の国との高等教育における 国際連携に関する議論とパートナーシップ構築の場となることを目指した、ボローニャ政策フォーラム(Bologna Policy Forum)が開催されている。 ※なお、ボローニャ・プロセスの関連文書(これまでに開催された会合の声明等)は、以下のリンク先(EHEAウェブサイト)で閲覧することができます。 |
リンク | http://www.ehea.info/Uploads/Declarations/BOLOGNA_DECLARATION1.pdf |
(2)主な質保証、学生交流の仕組み
欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG) |
欧州単位互換制度 European Credit Transfer and Accumulation System (ECTS) |
ディプロマ・サプリメント Diploma Supplement (DS) |
欧州チューニング Tuning Educational Structures in Europe |
欧州資格枠組み European Qualifications Framework (EQF) |
欧州高等教育圏資格枠組み Framework of Qualifications for the European Higher Education Area (QF-EHEA) |
エラスムス計画 European Community Action Scheme for the Mobility of University Students (ERASMUS) |
エラスムス・ムンドゥス計画 Erasmus Mundus |
エラスムス・プラス Erasmus+ |
①エラスムス計画
正式名称 | European Community Action Scheme for the Mobility of University Students: ERASMUS |
策定主体 | 欧州委員会 |
策定(実施)年 | 1987年 |
概略 | EUの学生が他国の高等教育機関へ留学や企業への研修ができるよう支援するプログラム。 1987年6月17日の開始当初は11か国3,244人の学生の参加であったが、開始25年間で270万人を超える学生と33か国の4,000を超える高 等教育機関が参加するまでに成長した。現在では、欧州の参加国の学生の4%が参加するプログラムとなっている。また、高等教育機関の教員や職員も対象とし ており、1997年以来25万人が参加している。
エラスムス計画は、2007-2013年期においては、欧州委員会の生涯学習プログラムの活動の一つに位置付けられている。また、ボローニャ・プロセスの開始や欧州単位互換制度(ECTS)の創設に重要な役割を果たしており、当プログラムの成功がエラスムス・ムンドゥス(※1)の開始につながった。 2014年からはエラスムス・プラス(※2)という新しいプログラムを開始する予定。 (※2)エラスムス・プラスについてはこちらを参照 |
リンク | http://ec.europa.eu/education/tools/llp_en.htm |
②エラスムス・ムンドゥス
正式名称 | Erasmus Mundus |
策定主体 | 欧州委員会 |
策定(実施)年 | 2004-2008年(第1期)、2009-2013年(第2期) |
概略 | 欧州とそれ以外の国・地域間の高等教育機関における奨学金プログラム及び学術交流の実施を通 じて、欧州の大学連携を強め、高等教育の質を高めることを目的とした計画。学生・研究者のグローバルな流動化(モビリティ)を促進させ、異文化間交流と対 話の場を提供するプロジェクトを支援。EU内の高等教育機関の協力と人材交流プログラムであるエラスムス計画の成功を受けて始まった。
2004年から2008年の第1期は、以下4つのアクションへの支援を行った。
2009年から始まった第2期は、以下3つのアクションを支援している。
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リンク | 第1期: http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2007:0375:FIN:EN:PDF 第2期: http://eacea.ec.europa.eu/erasmus_mundus/index_en.php |
③エラスムス・プラス
正式名称 | Erasmus+ |
策定主体 | 欧州委員会 |
策定(実施)年 | 2014-2020年 |
概略 | 2014年~2020年にかけて、最大500万人が他国での学習及び職業訓練/職業教育を受 けられるようにするための助成金プログラム。現在欧州委員会が実施している、生涯学習や青少年部門での様々な助成金プログラムを統合し、より統一性と透明 性を持たせることが狙いである。流動性(モビリティ)、教育とビジネスの協働、政策改革への支援の3つを主要アクションの柱とする。
Erasmus+から新たに実施される政策としては、以下のものがある。
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リンク | http://ec.europa.eu/education/erasmus-plus/index_en.htm |
以上の表の引用及び詳しくはこちら→独立行政法人大学評価・学位授与機構HP http://www.niad.ac.jp/n_kokusai/block2/1191501_1952.html
EUの教育に関する記事
(2016/02/29)世界に開かれた高等教育
本文はこちら→駐日欧州連合(EU) 代表部*http://eumag.jp/issues/c0216/
(2014/06/27)EUにおけるグローバル人材の養成
本文はこちら→駐日欧州連合(EU) 代表部*http://eumag.jp/feature/b0614/
(2012/03/30)未来への投資ーEUの教育政策
「EU教育政策の理念とは
上記5つの数値目標が教育のあらゆる年代をカバーしていることからもわかるように、EUが掲げる教育理念の柱に「ライフロング・ラーニング(生涯学習)」がある。幼児から社会人に至るまで、文字通り一生を通して受けられる教育の環境づくりを目指す考えだ。
これを補完する理念が「モビリティー(移動性)」。学生や研究者、教員がEU加盟国間や域外を地理的に移動して学べることを指すのはもちろんだが、学生が労働市場にアクセスしやすい環境、あるいは逆に社会に出ても学べる環境といった概念も含まれている。
EU各国は学生の移動を促進するため、学士・修士・博士課程の互換性を高め、履修単位を相互に認定するシステムを導入するとともに、履修科目の成績 表を統一した。1999年に調印され、大学発祥の地とされる場所の名前を冠したこの取り組み「ボローニャ・プロセス」には、現在EU加盟国以外も含め欧州 の48カ国が参加している。
また、「ライフロング」と「モビリティー」のコンセプトに付随して、学校教育以外での学習、いわゆる「ノンフォーマル教育」「インフォーマル教育」も重視し、これらの機関で得られた技能を認定する制度づくりも進められている。
さらに、ボランティアを奨励し、それを通じて得られた経験を評価することで、教育と社会貢献を結びつけた「人材育成」の努力も続けられている。
つまりEUが教育において重きを置くのは、あらゆる社会階層の人々が様々なライフサイクルの中で知識や技能の習得に参加できる流動性にある。こうしたライフロング・ラーニングとモビリティーの促進によって、時代とともに変化する労働市場のニーズに応える多様な人材を育成し、ひいては社会的疎外や貧困を解消するのが狙いだ。
EUが向上を目指す8つの能力・技能
では、EUが見据えるこれからの経済・社会モデル、労働市場の新しいニーズとは何か。教育の戦略的な枠組み以外に、EUが具体的にどんな分野に力を 入れようとしているのかについても見ておく必要がある。EUは2006年以来、8つの「カギ」となる能力、技能をリストアップし、加盟国に対して重点的に 注力するよう呼びかけている。
1)母語 2)外国語 3)数学、自然科学、工学 4)ICT(情報通信技術) 5)学習計画力 6)社会・市民活動参加 7)率先力、企業家精神 8)文化的感受性、表現力
読み書き、計算、といった基本的な能力はもちろん、テクノロジーに関連する技能に加え、将来の社会づくりに率先して参画する「進取の気性」を育てることにも重点が置かれているのが特徴だ。
幼児教育の段階からこの8項目の習得を重視して人材の育成を促しつつ、社会に出て働き始めた人々にもつねに専門学習・職業訓練の機会を与えていくこと、これがEUの教育モデルの柱である。」
以上の引用及び本文はこちら→駐日欧州連合(EU) 代表部*http://eumag.jp/feature/b0312/