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女性差別撤廃委員会(CEDAW)とレポート審議・総括所見(付:資料・史料)
更新:2016-03-16 掲載:2014-03-30 執筆:三成美保
(初出:三成他『ジェンダー法学入門』2011:史料等加筆)
◆CEDAWによるレポート審議
女性差別撤廃条約の履行を監視する基本的手段は、政府レポート審議である。同条約の締約国は、条約批准後1年以内に、その後は4年ごとにレポートを提出し、女性差別撤廃委員会(CEDAW)による審議を受けなければならない(18条)。しかし、審議を担当する CEDAWは、国連の諸人権機関のなかで必ずしも主流を占めなかった。当初は開催期間も短く(年間2週間)、審議が停滞した。2007年にジェンダー主流化の流れに即して、事態が改善されている(年間3回各期3週間に開催期間を延長)。日本は、2010年までに6回レポートを提出し、4回の審議を受けている。審議ののち総括所見(2007年までは最終コメントとよばれた)が出される。そこで示された勧告は、日本の法改正にも大きな影響を与えてきた。09年総括所見では、はじめて民法改正と暫定的特別措置が2年以内のフォローアップ(勧告実施に関する詳細な書面報告)対象とされた。
◆個人通報制度
個人通報制度の必要性は条約起草時に一部の国から主張されていたものの、女性差別は深刻な国際犯罪ではないとか、各国の文化的・社会的伝統に根ざした女性差別は調査・勧告になじまないとする見解のほうが支配的であった。1980年代後半に冷戦後の内戦による女性に対する暴力がクローズアップされ、事態が変わる。「女性に対する暴力」専門家会議(91年招集)が提案した暴力に関する個人通報制度は、条約全体を対象とする制度へと発展する。個人通報制度と調査制度を定めた99年選択議定書は、100カ国が批准している(2011年2月現在、日本は未批准)。しかし、個人通報の件数は少ない。自由権規約にもとづく個人通報(1977年の開始後1500件超)に比し、女性差別に関する個人通報は10年間で11件にすぎない。司法アクセスから疎外されがちな女性は、「国内的な救済手段を尽くしたのち」という要件を満たしにくい結果と思われる。
◆参考サイト(資料・史料)
●全体
●外務省「女性差別撤廃条約」関係(CEDAWレポート審議資料も掲載されている) →http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/
●内閣府男女共同参画局「女性差別撤廃条約」関係(CEDAWレポート審議資料・同英語版のほか、女性差別撤廃条約に関する一般勧告も掲載されている)
→http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/index.html
→一般勧告(PDF)
●日本政府レポート
(外務省HP)→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/
●日本政府第6回レポート・統計資料(2008年4月)
●女子差別撤廃条約実施状況 第7回及び第8回報告(PDF)(統計資料(PDF))
●CEDAWによる日本政府レポート審議と最終見解(総括所見)
(1)第1回審議(1988年)
(2)第2回審議(1994年)=第2回及び第3回日本政府レポートに対するCEDAW最終見解(1994年)
→(外務省HP)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/saishu_c.html
(3)第3回審議(2003年)=第4回及び第5回日本政府レポートに対するCEDAW最終見解(2003年)
→(外務省HP)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/pdfs/4-5_k.pdf
(4)第4回審議(2009年)
→(外務省HP)第6回レポート報告に対するCEDAW審議の最終見解(2009年8月)
(5)第5回審議(2016年)
→(外務省HP)
【分野:ジェンダー法学】