【特集3-0】最新動向(LGBT/LGBTIの権利保障)

最終更新:2018-12-11 掲載:2015.02.13 執筆:三成美保

最新ニュースから

〇大学の取り組みから(2017~2018年)

2017~2018年にかけて、明るいニュースがあった。大学におけるLGBT支援の進展である。いくつかの大学で、以下のような支援宣言やガイドラインが出された。

2017年

「SOGI宣言」 大阪府立大学(https://www.osakafu-u.ac.jp/osakafu-content/uploads/sites/428/guideline_sogi.pdf

「SOGI宣言」 大阪大学(http://www.danjo.osaka-u.ac.jp/sogi/

LGBT支援を明示した「ダイバーシティ推進宣言」 早稲田大学(https://www.waseda.jp/inst/diversity/news/2017/07/01/2740/

2018年

4月30日 明治大学・国際基督教大学・津田塾大学の学長3名が「SOGI(性的指向・性自認)の多様性に関する学長共同宣言」を公表(LGBT法連合会)。

http://lgbtetc.jp/wp/wp-content/uploads/2018/05/20180430%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%88%86%E7%A7%91%E4%BC%9APPT.pdf

7月 お茶の水女子大学が、トランスジェンダーMTFの受け入れ方針を表明。

8月 名古屋大学「LGBTガイドライン」(http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/declaration/lgbt/index.html)。

2019年には、性的指向・性自認(SOGI)にもとづく差別を禁止し、LGBT(性的マイノリティ)に対する大学の支援がいっそう広がることが期待される。

○2016年5月28日「LGBT差別解消へ法案 野党4党提出、公明は慎重姿勢」(朝日新聞デジタル)

「民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちの野党4党は27日、性的少数者(LGBT)などへの差別解消を推進する法案を衆院に共同提出した。今国会では審議入りはできない見通し。」
(朝日新聞デジタルから一部引用)
(出典)http://www.asahi.com/articles/ASJ5W566JJ5WUTFK00B.html

○2016年5月27日「LGBT差別解消法案を衆院に提出」(民進党HP) 

「民進党は27日午前、「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(通称・LGBT差別解消法案)を衆院に提出した。

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーをはじめとする性的少数者が性自認や性的指向をカミングアウトした場合や意図せずに知られた場合、差別にさらされるという困難に直面する。本法案は、国や地方自治体が性的指向又は性自認を理由とする差別の解消を推進するための方針・計画などを定め、行政機関や事業者が性的指向又は性自認を理由として差別的取扱いを行うことを禁止すると同時に、雇用(募集・採用)の際の均等な機会を提供し、ハラスメントを防止すること、学校などでいじめなどが行われることがないように取り組むことなどを定めたもの。

本法案には、次のような内容を盛り込んでいる。

  1. 目的 性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等を推進し、もって全ての国民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する豊かで活力ある社会の実現に資すること。
  2. 基本方針及び都道府県基本計画 政府は、性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する基本方針を作成。都道府県は都道府県基本計画を、市町村は市町村基本計画を策定。
  3. 差別の禁止 行政機関等(国の行政機関、地方公共団体等)及び事業者における性的指向又は性自認を理由とする差別的取扱いの禁止。行政機関等及び事業者に対する性的指向又は性自認に係る社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の義務(事業者については努力義務)。
  4. 雇用の分野における差別の解消等 募集及び採用についての均等な機会の提供、雇用後の各場面における差別的取扱いの禁止、必要かつ合理的な配慮の努力義務。ハラスメントの防止に関する雇用管理上必要な措置。
  5. 学校等における差別の解消等 差別の解消・ハラスメントの防止に関する学校長等の必要な措置。
  6. 差別の解消等のための支援措置 相談及び支援並びに紛争の防止又は解決のための体制の整備。啓発活動 等

(以下略)」

PDF「LGBT差別解消法案の概要」LGBT差別解消法案の概要

PDF「LGBT差別解消法案要綱」LGBT差別解消法案要綱

PDF「LGBT差別解消法案」LGBT差別解消法案

(出典)民進党HP https://www.minshin.or.jp/article/109178

○2015.11.02「女性トイレ禁止は差別」提訴へ 性同一性障害の公務員(朝日新聞デジタル) 

出典:http://www.asahi.com/articles/ASHBY00QNHBXUUPI002.html

「心は女性である性同一性障害の職員は、戸籍上の性別が男性である限り、女性トイレを使ってはならない――。経済産業省がこんな原則を示し、使いたければ異動ごとに職場で同障害を公表するよう求めていた。この職員は近く「人格権の侵害で、同障害を理由にした差別だ」として、東京地裁に行政訴訟と国家賠償訴訟を起こす。

弁護団によると、性的少数者が職場での処遇の改善を求める訴訟は初めて。

この職員は40代で、戸籍上は男性だが心は女性。入省後の1998年ごろ同障害の診断を受け、2009年に女性としての処遇を申し出た。診断から 11年かかったのは、ホルモン治療や女性の容姿に近づけるための手術を重ね、「女性として社会適応できる」と思えるまで待ったからだ。11年には名前も女性的なものに変更。今では初対面の人にも女性として認識され、職場の女子会に呼ばれる。

経産省は、女性の服装や休憩室の使用は認めたものの、女性トイレの使用は原則として許可しなかった。この職員が情報公開請求して開示された資料によると、女性トイレの使用を認めない理由について、経産省は①労働安全衛生法の 省令で男女別のトイレ設置が定められている②女性職員の了解が不可欠だが、2人から「抵抗感がある」との声があがった――などと説明。戸籍上の性別を女性 に変えない限り、障害者トイレを使ってもらい、女性トイレを望む場合は異動ごとに同障害を公表して同僚の理解を得るよう求める原則を確認した、としてい る。

日本で性別変更するには卵巣や子宮、睾丸(こうがん)を摘出するといった性別適合手術が必要だが、この職員は皮膚疾患などで手術が受けられなく なった。職員側の主張では、上司から13年1月に「手術を受けないなら男に戻ってはどうか」などと言われた。同障害の公表を避けるため、異動希望を出せな くなった。うつ病となり、同年2月から1年以上休職した。

人事院に 処遇の改善を求めたが認められず、訴訟に踏み切る。この職員は、障害者トイレが工事中だった際に暫定的に認められた「2階以上離れた女性トイレ」を現在も 使うが、「他の女性職員と平等に扱ってほしい」と訴える。経産省は「職員のプライバシーに関する問題については答えられない」としている。同障害の人への 処遇に関する国の統一的な指針はなく、各省庁や企業に委ねられている。公的機関では、同障害の上川あや・東京都世田谷区議が03年に初当選した当初、戸籍上は男性だったが女性トイレの使用を認められた例がある。」

【解説(三成美保)】

トランスジェンダーのうち、身体変更を求める割合は、2~3割とされる(ドイツ)。ドイツでは、すでに身体変更は法的性別変更の要件にはされない(日独の法律比較については→【特論12】LGBTIの権利保障(三成美保))。
国際的にも「ジョグジャカルタ原則」(2006/2007)は、トランスジェンダーの身体変更を求めることを禁止するよう求めている(→【特集3】LGBT・LGBTIの権利保障ー国際的・国内的動向)。

○2015.06.26  アメリカ連邦最高裁判決

2015年6月26日、アメリカの連邦最高裁判所は、同性婚を認める判断を示した。これは、全米における同性婚の合法化を認めるものであり、画期的な判決となる。
アメリカでは、全50州のうち、37州と首都ワシントンで同性婚が認められていたが、中西部オハイオ州などの4州では同性婚が認められていなかった。同性婚に関する州法が異なっていたため、連邦最高裁判所が審理を進めていた。判決にあたっては、9人の裁判官のうち5人が同性婚合法化に賛成し、4人が反対した。

判決文全文(全103ページ)はこちら⇒http://www.supremecourt.gov/opinions/14pdf/14-556_3204.pdf

クリックして14-556_3204.pdfにアクセス

○2015.05.17 LGBT法連合会「性的指向および性自認等による差別の解消、ならびに差別を受けた者の支援のための法律に対する私たちの考え方〜困難を抱えるLGBTの子どもなどへの一日も早い差別解消を〜」(発表)

→「ポンチ絵付き私案」http://lgbtetc.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%81%E7%B5%B5%E4%BB%98%E3%81%8D%E7%A7%81%E6%A1%88.pdf

→「LGBT困難リスト」http://lgbtetc.jp/pdf/list_20150830.pdf

○2015.02.12 同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行する方針を発表(東京都渋谷区)

東京都渋谷区が、同性カップルから申請があれば、「結婚に相当する関係」と認めて証明書(パートナーシップ証明書)を発行する方針を発表した。3月議会に条例案を提出する予定である。可決されれば4月1日施行、証明書は2015年度内の開始を目指す。
条例案は男女平等や多様性の尊重をうたった上で、「パートナーシップ証明」を定めた条項を明記する。区内に住む20歳以上の同性カップルが対象で、互いを後見人とする公正証書や同居を証明する資料を提出すれば、「パートナーシップ証明」を発行する。カップルを解消する仕組みもつくる。この証明には法的拘束力はないが、区民と区内の事業者に、証明書を持つ同性カップルを夫婦と同等に扱うよう求め、条例に反した事業者名は公表する。背景には、同性カップルがアパート入居や病院での面会を「家族ではない」として断られるケースが問題になっていることがある。

【解説】自治体が同性同士をパートナーとして証明する制度は、渋谷区が全国初となる。しかし、男女共同参画計画等に「性の多様性」を尊重することを定め、取り組みを行っている自治体はすでに存在する(大阪市淀川区など)。諸外国でも、まず自治体から権利保障の取り組みがはじまり、同性婚容認の法律制定につながってきた。その意味で、今回のような自治体の取り組みは大きな意義があると家族法学者たちは指摘している。

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