(補論5)現代ムスリム諸国の同性愛者への罰則規定について

掲載 2018-06-15 執筆 小野仁美

現代ムスリム諸国においては、同性愛者を違法であるとして罰則を規定する国も見られる。しかしこれがイスラム法に直接由来するものであるか否かについては検討を要する。たとえば、チュニジアにおいて、同性愛を罰する現行法(刑法第230条)を最初に制定したのは仏保護領下(1913年)においてであり、保護領となる以前の1860年制定のチュニジア刑法においては、同性愛を罰する規定はなかったという。
なお、チュニジアの現行法はアラビア語版を公式のものとしながら、補足的にフランス語版が公表されているが、アラビア語版では男性同士の同性愛者をal-liwāṭ(lūṭ の複数刑, クルアーンにおけるロトの民に由来)、女性同士の同性愛者をmusāḥaqahと表記するのに対し、フランス語版では、la sodomie とのみ書かれ、おそらく女性同士の同性愛者は含まれていない。
(2018.6.11小野仁美)