【NEWS】2015.09.11.改正労働者派遣法が成立(三成美保)

【NEWS】2015.09.11.改正労働者派遣法が衆議院本会議で成立

掲載:2015.09.11 執筆:三成美保

2015年9月11日、改正労働者派遣法が成立した。政府は「派遣労働者のキャリアアップにつながる」と主張し、野党や連合は「派遣労働の固定化につながる大改悪」と批判している。

(1)労働者派遣法とは?

○法律名(正式名称)

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年七月五日法律第八十八号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S60/S60HO088.html

○労働者派遣法

  • 第1章 総則(目的、用語の定義、適用範囲)
  • 第2章 労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置
    • 第1節 業務の範囲
    • 第2節 事業の許可等
      • 第1款 一般労働者派遣事業
      • 第2款 特定労働者派遣事業
    • 第3節 補則
  • 第3章 派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置
    • 第1節 労働者派遣契約
    • 第2節 派遣元事業主の講ずべき措置等
    • 第3節 派遣先の講ずべき措置等
    • 第4節 労働基準法等の適用に関する特例等
  • 第4章 雑則(施行に必要な指導・助言及び勧告・改善命令・公表・申告・報告・立入検査、公共職業安定所における相談・援助、労働者派遣事業適正運営協力員、手数料)
  • 第5章 罰則

○労働者派遣(定義)

「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」(労働者派遣法第2条第1号)
  • 労働者派遣は、本来は、職業安定法(昭和22年法律第141号)(法律はこちら→http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO141.html)が禁じている「労働者供給事業(供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」(職業安定法第4条第6号)に該当する。
    • 職業安定法第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
    • 同第四十五条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

(2)2015年9月11日成立の改正法(附帯決議)

○「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する 法律案に対する附帯決議」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f069_090801.pdf

○「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f069_090802.pdf

(3)派遣労働とジェンダー

○労働者派遣法「改正」法採決に対する声明(2015年9月11日)NPO法人 派遣労働ネットワーク(理事長 中野麻美)

(以下引用)ホームページアドレス http://haken-net.or.jp
「1. 労働者派遣法「改正」法は、施行日を本年9月30日とするなどの修正を加え、同一労働同一賃金を推進する法案とともに、衆議員本会議で採決されました。
労働者派遣法「改正」法は、派遣が禁止されている業務を除き、無期雇用派遣(期間の定めのない労働契約で雇用された労働者を派遣する形態)については期間制限なく受け入れることができるようにし、有期雇用派遣(期間の定めをおいた労働契約で雇用された労働者を派遣する形態)については、一人の派遣労働者を派遣先の同じ部署(課)で受け入れる期間を3年で制限し、あわせて派遣先の事業所では派遣労働者を受け入れ可能期間を3年として過半数組合・過半数代表者からの意見聴取さえあれば3年を超えて派遣を受け入れ続けることができるという大幅な規制緩和を行うものです。

2. そもそも労働者派遣法は、労働組合・労働者の強い反対を押し切って1986年に制定されたもので、職業安定法44条の労働者供給事業禁止規定の例外として派遣という働き方を認めました。しかし、この働き方は、商取引(労働者派遣契約)が雇用や労働条件に事実上の影響を及ぼし、労働が競争入札にかけられるなど「買い叩き」をすすめることから、利用は厳しく規制されるべきだとされてきました。労働者派遣法が、派遣労働者の待遇の改善と雇用の安定とともに、派遣先の常用労働者が派遣労働者にとって代わられないようにする「常用代替防止」を旨としてきたのも、そのためです。そして、派遣先に直接雇用される常用労働者との「競合」が生じないよう、業務と期間の組み合わせによる厳格な利用規制を置いてきました。
これに対して今回の改正は、「無期雇用派遣」は、常用代替の例外としてフリーに利用できるようにし、「有期雇用派遣」は、これまで原則1年で3年が絶対的上限だった期間制限を「意見聴取」さえあれば長期の派遣受入を可能にするもので、「常用代替防止」の基本趣旨を否定する「正社員ゼロ法案」として手厳しい批判がなされてきたところです。国会審議においても、唯一歯止めとなる「意見聴取制度」が過半数組合・過半数代表者の反対を押し切って一方的に受け入れを継続しても許されてしまうことが明らかになるなど、常用代替防止が「絵に描いた餅」でしかないことが明らかになりました。
国会の議論で制度の骨組みに欠陥が明らかになったのであれば、法案修正に向けた議論が尽くされるべきです。

3. 政府は、この法案を、派遣事業をすべて許可制にして、派遣労働者のスキルアップと雇用の安定(無期雇用化や派遣先の直接雇用化)を促進し、待遇改善をはかるものだと説明しています。しかし、本当に派遣労働者が求める安定した雇用保障を実現するものかといえば、派遣先の直接雇用化も無期雇用化も、ハードルがいくつもあることが明らかになりました。産業界は、派遣を期間制限なく利用したい意向ですが、労働者の雇用は法制定以来細切化して、3か月の契約が「長期のお仕事」になっています。派遣の長期利用は、短期で使い捨てしてどんどん人を入れ替えられるようにすることによって成り立っています。
「改正」法では、派遣先に雇用する努力義務が課せられているだけで、派遣元の雇用安定化措置の適用を受ける労働者の範囲も限られます。そもそも無期雇用派遣でさえ、労働者派遣契約が終了したときには仕事を失うことになりますが、許可条件で「契約終了のみを理由として解雇しない」とされても、賃金など待遇が下がることへの規制はありません。このような雇用を「安定雇用」とは言いません。
そして、教育訓練や正社員化を促進し、均等待遇を実現するというなら、何より、それを求める派遣労働者が権利の主体となって自らの経済的地位や労働条件の向上のために派遣元・派遣先に働きかけることが必要ですが、これらの義務は公法上の義務であって契約上の義務ではないとされ、交渉にもハードルがあります。
国会では、これらの問題が議論され、派遣労働者の雇用安定化に向けた抜本的な対策の必要が明らかにされました。

4. 派遣労働ネットワークのアンケート調査(2013年)では、80%が年収300万円に届きません。前月の月収平均は17万4,444円、前年の年収平均額は213万340円で、連合が試算した最低生計費にも及びません。賃金は、調査を開始した1991年以来ずっと下がっていて、貯金を取り崩したり、保険料の減免を求めたり、家賃などを滞納したりしながら、生計を維持しています。
いま子どもの6人に一人が貧困のなかにおかれていますが、この所得では、子どもを育てることはできません。アマルティア・センは、貧困を「潜在能力を実現する権利の剥奪」であると言っていますが、派遣労働者と子どもたちは、人間としての基本的な権利が根底から剥奪されています。低賃金だから、ダブル・トリプル・ワークで、くたくたになっています。病気になっても「患者」になることさえできません。まして、高い所得につながる技能を身に着けるような時間もお金もありません。
また、派遣では仕事と生活が「両立できない」という人は8割近くにのぼります。できない理由は、41%が「収入が充分でない」からです。子どもを産んで雇用を失い、雇用を失ったから子どもを保育所に預けられない、預けられないから働けません。買い叩きの究極の形態なのに、仕事と生活を両立させて専門技能を発揮して働けるといって解禁した登録型派遣(有期雇用派遣)の根拠はなくなっています。

5. 私たちは、派遣労働者の現状と職場を取り巻く厳しい環境を改善して格差と貧困を解消するために真に必要な法見直しを求めてきました。本日衆議院本会議で可決された「改正」法には、多くの欠陥と修正すべき事項が多々あり、参議院付帯決議が前代未聞の多数項目にわたっているのもそのためです。労働関係法は、公労使の協力がなければうまく運用できません。まして労働者に不利益を強いる規制緩和には労働者の納得が必要です。多くの疑問や批判が寄せられるなかで、しかも、「準備と周知に相当な時間が必要なことを考えれば、円滑な施行は不可能で、現場は大混乱に陥る。欠陥だらけで、廃案にすべき法案であることは明らかだ」とする反対討論にもかかわらず、多数に頼んで可決させることもまた、憲政史上前代未聞の暴挙というべきです。
ここに、改めて強く抗議の意思を表明します。あわせて、政府には、国会審議において明らかになった「改正」法の欠陥や問題点をふまえ、多数の項目にわたって付帯決議がなされていることを深く受け止め、その内容を政省令・指針に盛り込むよう強く要請します。
また、NPO派遣労働ネットワークは、引き続き、「改正」法の可決成立を受けて政省令・指針の策定に最大限の努力を払うとともに、今後とも、真の法改正をはじめ、派遣労働者の生活と権利のための取り組みにまい進することを決意し、ここに表明するものです。
以 上」

○データ

【解説(三成)】1985年均等法成立時の女性労働者は68%が正規雇用であった。しかし、同年以降、女性のパート労働者化が進む。これは、専業主婦優遇策の影響であると考えられる。他方、1985年の派遣法は、男女ともに派遣労働者の比率をほとんど増やしていない。1990年のバブル崩壊後、「雇用流動化」が唱えられるようになった。これに対し、1999年(平成11年)の派遣自由化により、男女ともに派遣労働者比率が急速に増えている。また、近年は、派遣労働者のなかで女性が占める比率が高くなっている。

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男女共同参画白書H25年版

 

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男女共同参画白書H25年版

(4)派遣法改正の経緯

○戦後労働法の原則=中間搾取を排除するために「直接雇用」を原則とする。
  • ○1947年職業安定法
    • 44条:労働者供給事業を禁止。
    • 45条:労働組合等にだけ、無料の労働者供給事業を行うことができる。
  • ○労働基準法
    • 6条:中間搾取の排除として、他人の就業に介入して利益を得てはならないと規定。

○1985年(昭和60年7月)派遣法成立(均等法成立と同年)対象業務13業務(翌年16業務に拡大)

  • 業務を「専門性が高い業務」に限定することにより、労働者の「直接雇用」原則を維持した。
  • 13業務
    • ①ソフトウエア開発、②事務用機器操作、③通訳・翻訳・速記、④秘書、⑤ファイリング、⑥調査、⑦財務処理、⑧取引文書作成、⑨デモンストレーション、⑩添乗、⑪建築建物清掃、⑫建築設備運転・点検・整備、⑬受付・案内・駐車場管理
  • 追加3業務
    • ①機械設計、②放送機器操作、③放送番組等演出

○1996年(平成8年)対象業務26業務に拡大(「専門26業務」)

  • 追加10業務
    • ①研究開発、②事業実施体制等の企画・立案、③書籍等の製作・編集、④広告デザイン、⑤インテリアコーディネーター、⑥アナウンサー、⑦OAインストラクション、⑧テレマーケティング、⑨セールスエンジニア、⑩放送番組の大道具・小道具の作成・設置等

○1997年(平成9年)ILO第181号条約採択

  • 評価
    • 「それまでILO(国際労働機関)は、民間の労働力需給調整システムを敵視し、有料職業紹介所の禁止を加盟各国に求めてきたが、1997年 月19日に採択した第181号条約により、民間の職業紹介事業、労働者派遣事業その他の求職関連サービスを認めた上で、そのサービスを利用する労働者の保護を求めることとなった。」(岡村2009、125ページ、注30)
  • (引用)条約の概要(ILO事務所)http://www.jil.go.jp/jil/kisya/syokuan/971224_01_sy/971224_01_sy_sankou6.html
    1. 本条約において、民間職業紹介所とは、職業紹介、労働者派遣その他求職に関連するサービスを提供するものをいうものであり、その法的地位は、国内法令及び国内慣行により並びに最も代表的な労使団体との協議の上、決定される。
    2. 加盟国は、関係のある最も代表的な労使団体との協議の上、所定の状況の下で、本条約の適用範囲から一部のものを除外できる。
    3. 加盟国は、本条約に基づいて、民間職業紹介所が1)労働者の均等待遇、2)労働者の個人データの保護、3)労働者からの料金・経費の不徴収等を確保するために適切な措置を講ずるべきである。
    4. 加盟国は、本条約に基づいて、1)苦情等の調査に関する機構と手続き、2)団体交渉、労働条件等に関する派遣元及び派遣先の責任の決定及び分担、3)公共職業安定機関と民間職業紹介所の協力を促進するための措置の策定等の措置を講ずるべきである。
    5. 本条約は、法令又は判例、仲裁裁定若しくは労働協約その他国内慣行に従うその他の手段により適用する。
  • 条約の解説についてはこちら(ILO)→http://www.ilo.org/tokyo/standards/list-of-conventions/WCMS_238998/lang–ja/index.htm
  • 条約(仮訳)はこちら(ILO)→http://www.jil.go.jp/jil/kisya/syokuan/971224_01_sy/971224_01_sy_sankou7.html

○1999年(平成11年)原則自由化

○2003年(平成15年)製造業務の派遣解禁

○2015年(平成27年)

  • 全業務につき、1労働者の派遣期間を3年に制限。
  • 「専門26業務」の廃止・派遣期間の制限を撤廃。

【参考文献】

○岡村美保子「労働者派遣法改正問題」『レファレンス』平成21年10月号 http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200910_705/070506.pdf

(5)関連ニュース

○NHKオンライン(2015.09.11)

全文はこちら→http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150911/k10010229051000.html

「(前略)改正労働者派遣法の詳細
…今回の改正では、この「専門26業務」を廃止し、派遣期間の制限を撤廃する一方、1人の派遣労働者が同じ部署で働ける期間を3年に制限します。一方で、改正法には、労働者の雇用安定措置も盛り込まれており、派遣会社に対し、派遣期間が上限の3年に達した労働者を、直接雇用するよう、派遣先に依頼することや、正社員に採用されなかった場合でも、新しい仕事を紹介することを義務づけています。さらに、派遣会社に、計画的な教育訓練を行うことを義務づけているほか、悪質な業者を排除するため、すべての派遣事業を厚生労働大臣による「許可制」にするとしています。改正法について、厚生労働省は、「派遣労働者のキャリアアップを図るとともに正社員への道を開くものだ」としていますが、労働組合などは、「3年ごとに派遣労働者を入れ替えれば、何年でも同じ業務を任せることが可能で、派遣労働の固定化につながる」などと批判しています。」(中略)

「法改正後の動き
法改正とあわせて、参議院では、民主党などの主張を踏まえ、派遣は臨時的、一時的なものという基本原則のもと労働者の正社員化に向けた取り組み を講じることや、悪質な派遣会社は許可の取り消しを含め処分を徹底すること、さらに派遣会社が得る料金と労働者の賃金の差額の割合に関する規制の在り方を 検討することなど39項目に上る付帯決議が可決されました。厚生労働省は、今後、こうした付帯決議の内容も踏まえつつ、今月30日の改正法の施行に必要な政省令の取りまとめを急ぐとともに、派遣会社などを対象に説明会を開くなどして、周知をはかることにしています。ただ、今月30日まで、残された時間が限られていることから、派遣会社などからは、現場で混乱が起きないか懸念する声も出ています。」

「改正労働者派遣法には懸念の声も
労働者派遣法の改正には労働組合などから派遣労働者の雇用がさらに不安定になると懸念する声も上がっています。今は、一部の業務を除き、1つの業務で企業が派遣労働者を受け入れられるのは最長でも3年とされていますが、改正労働者派遣法ではその制限が撤廃され、労働組合などに意見を聞いたうえで人を入れ替えれば、何年でも派遣に業務を任せられるようになります。このため労働組合などは派遣労働が固定化して正社員のポストが減り、低賃金の非正規雇用が増えると主張しています。また、これまで秘書や通訳などの26種類の専門業務は派遣期間の制限がなく、同じ職場で働き続けられましたが、改正法では3年で職場を変わらなければならなくなるため雇用がさらに不安定になるおそれがあるとしています。一方、政府は、派遣会社に対して派遣労働者を派遣先の企業に直接、雇用するよう依頼したり、新たな派遣先を紹介したりすることなどを義務づけており、雇用は安定するとしています。また、派遣会社を許可制にして派遣労働者に教育訓練を行うことも義務づけているためキャリアアップが図られ、希望する人には正社員の道が開かれるなど待遇改善に結びつくとしています。」

「連合「法律制定以来の大改悪」
連合は、「派遣労働者の低処遇をそのまま放置し、常態的な間接雇用を導入するもので、法律の制定以来の大改悪と言える。極めて短い周知期間しか 置かずに改正法を施行することで、派遣労働者に不利益を招くようなことは絶対にあってはならず、厚生労働省に対し責任を持った万全の対策を講じるよう強く 求める」とするコメントを出しました。」