【紹介】ロンダ・シービンガーの科学史・科学政策研究(小川眞里子)
小川眞里子(掲載:2014.06.06)
「ロンダ・シービンガーの科学史・科学政策研究」(小川眞里子)ーー冒頭から一部抜粋
ロンダ・シービンガー(Londa Schiebinger)の3冊の著作の翻訳(いずれも工作舎刊)に関わったことから、ここではその後の関連著作への言及も交えながら、シービンガーの仕事の一括紹介を行ないたい。以下、3冊の著作の概要と相互の関連については、図1を参照して欲しい。本文中のA、B、CおよびA-1、B-2などの記号は、図1に対応している。
The Mind Has No Sex?(A『科学史から消された女性たち』)は、彼女の博士論文(ハーヴァード大学)をまとめたものである。2冊目Nature’s Body(B『女性を弄ぶ博物学』)は、フレック賞(科学社会学学会)を受賞し好評を博した著作であるが、邦訳のタイトルと帯がいささか災いして、わが国では知名度が低く留まっている。しかし、科学知識に埋め込まれたジェンダーを具体的な事例からユーモアを交えて論じており、もっと読まれて欲しい1冊である。そして、3冊目Has Feminism Changed Science ?( C『ジェンダーは科学を変える!?』)は、歴史に題材を得たAとBの2著作の延長線上にある現代の問題に歴史家の目をもって取り組んだ意欲作である。図1で見るように、これら3冊の内容は、大きく「人の問題」「知識の問題」「その他(科学文化、性差の研究など)」に分けられる。「人の問題」の中心的問いは「なにゆえ女性科学者は少数なのか?」であり、「知識の問題」のそれは「科学知識にジェンダーはいかに投影されてきたか?」であると言えるだろう。(以下、略)
全文はこちら→「ロンダ・シービンガーの科学史・科学政策研究」(小川眞里子)(お茶の水女子大学FーGENSジャーナル1号、2003年)PDF
シービンガーの著作(翻訳)
A The Mind Has No Sex?: Women in the Origins of Modern Science(Harvard University Press, 1989)
邦訳『科学史から消された女性たち』工作舎、1992年
B Nature's Body: Gender in the Making of Modern Science(Boston: Beacon Press, 1993)
邦訳『女性を弄ぶ博物学』工作舎、1996年
C Has Feminism Changed Science? (Harvard University Press, 1999)
邦訳『ジェンダーは科学を変える!?』工作舎、2002年