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フェミニズム
2024/03/15 更新(修正・追加) 執筆:三成美保/初出:三成他『ジェンダー法学入門』2011年)
フェミニズムの多様な潮流・概念(事典・辞典)
フェミニズムの多様な潮流・概念については、以下の各事典・辞典を参照。
■リサ・タトル(渡辺和子監訳)『新版フェミニズム事典』明石書店、1998年
■井上輝子、上野千鶴子、江原由美子、大沢真理、加納実紀代編『岩波女性学事典』岩波書店、2002年
■ソニア・アンダマール、テリー・ロヴェル、キャロル・ヴォルコウィッツ(奥田暁子監訳、樫村愛子、兼子珠理、小松加代子訳)『現代フェミニズム思想事典』明石書店、2000年
■マギー・ハム(木本喜美子、高橋準訳)『フェミニズム理論辞典』明石書店、1999年
◆リベラル・フェミニズム(Liberal Feminism)
フェミニズムには多様な潮流がある。もっとも長い歴史をもつのがリベラル・フェミニズムである。これはつねに主流派を占め、法や文化における性的平等の認識を支配した。リベラル・フェミニズムは、「性的平等」の権利を、「性別に基づき他者と異なる扱いをうけることはないという個人の権利」と定義する。平等が達成されるのは、集団であれ個人であれ、女性が男性と社会的に平等になったときではなく、女・男ともに、個人が自分自身の選択により自己の利益を最大限に追求することができる選択権を保障されたときとされる。
◆社会主義フェミニズム(Socialist Feminism)
社会主義フェミニズムは、個人主義を基礎に置くリベラル・フェミニズムとは異なり、女性抑圧の根源を資本主義にもとめる。したがって、主体としての女性についても、「個人」としての女性を問題視するのではなく、「女性という集団」を論じようとする。他方で、平等化達成のためには体制変革が必要であると考え、抑圧された他の諸集団との連携を重視する。
◆ラディカル・フェミニズム(Radical Feminism)
ラディカル・フェミニズムは、性抑圧をあらゆる形態の抑圧の根源とする考え方(性支配一元論)をとり、男性を抑圧者とみなし、女・男の利害は競合・敵対すると考える。女・男の分離を前提としたうえで、「女性という集団」の独自の存在意義を強調しようとする傾向が強い(差異派・分離主義)。体制変革を求める点では社会主義フェミニズムと共通するが、労働条件等の改善で満足せず、しばしば示威行動により、メディアや催し(ミス・コンテストなど)のジェンダー・バイアスを公然と批判した。ラディカル・フェミニズムは、さまざまな意味で第2波フェミニズムを決定づけた。セクシュアル・ハラスメントやDV、セカンド・レイプなどの多くの新しい概念も生み出した。