LBGTと性分化疾患ー「性別の二元構造」とLGBTI(三成美保) 

最終更新2015.07.19 2014.03.11執筆・2014.11.18追記:三成美保

ヒト(人間)は、有性生殖の生物である。遺伝情報と栄養分を備えた大きな生殖細胞(卵子)をもつのがメス、遺伝情報しかない小さな生殖細胞(精子)をもつのがオスである。ヒトが有性生殖によって種を存続させる以上、「メス/オス」という「性別の二元構造(生物学的性差)」がなくなることはない。しかし、生物学的性差をつくりだそうとする発生の仕組みそのものが、ヒトの身体を多様にする。
「典型的な男女」に属さない人びとは、近年の国際文書では「LGBT/LGBTI」と総称され、彼らの権利保障が課題となっている。
①性染色体(XX,XY)、性腺(性ホルモン)、解剖学的性(内性器=卵巣・精巣/外性器)の発達状態が「非典型的」である先天的状態は、医学的には「性分化疾患」とよばれる。治療が必要な場合も少なくない。性分化疾患という医学名称を避け、アイデンティティとして「インターセクシュアルI」を名のる場合もあるが、それは「性自認が中間的」という意味ではない。
②「性的指向」には、異性愛・同性愛(ゲイG・レズビアンL)・両性愛(バイセクシュアルB)がある。性的指向は必ずしも固定的ではなく、一生のうちに変化することもある。身体的性別と性自認が一致しないケース(医学的には「性別違和症候群」)を「トランスジェンダーT」という。トランスジェンダーのあり方は多様で、性別再指定手術が必要な場合(トランスセクシュアル/いわゆる「性同一性障害」GID:ただし「障害」という表現は不適切であり、日本の「性同一性障害者特例法」は名称変更を含む法改正が急務である)・異性装・名称変更を望むだけの場合まで幅広い。
(参考:三成・姫岡・小浜編『歴史を読み替える(世界史篇)』2014年)

  最終更新 2015.07.19 追記 2014.11.18 三成美保

【参考】LGBTの人口比(推計)

●2015年電通調査

「LGBT層に該当する人は7.6%(2012年調査では5.2% ※3)と算出されました。」
詳しくは→http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0423-004032.html

PDFはこちら→*2015041-0423pdficon_large

●2012年電通調査

電通総研の調査(2012年、下記PDF)によると、LGBTの割合は、5.2%である。
内訳は、以下の通り。
L(レズビアン)0.1%
G(ゲイ)0.3%
B(バイセクシュアル)0.7%
T(トランスジェンダー/トランスセクシュアル)4.1%
※トランスジェンダー(身体を変えるつもりはない)3.4%
※トランスセクシュアル(身体を変えたいと考えている)0.7%
※MTF(生まれたときの身体の性別は男性、性自認は女性)2.5%
※FTM(生まれたときの身体の性別は女性、性自認は男性)1.6%

電通総研「LGBT調査2012」pdficon_large(全167頁)
→朝日新聞2014年11月2日・3日朝刊「男/女が生きる」、11月16日朝刊「性は男と女だけじゃない」

【参考】性分化疾患

indexきょう【書籍紹介】 毎日新聞「境界を生きる」取材班『境界を生きるー性と生のはざまで』毎日新聞社、2013年
「性分化疾患」や「トランスジェンダー」の人たちが直面する差別や抑圧、周囲の無理解や好奇の目に苦しんだ事例を紹介している。性を「男/女」に二分することが、いかに人権侵害につながるかについて考えさせられる。

同書から2例を紹介しておこう。あなたなら、真琴さんや光さんにどう接するだろうか?

●「XX/XYモザイク型」の真琴さんは、男の子として育ったが、小学5年のときに初潮を迎え、体力が男子生徒についていけなくなった。親と医師のすすめで男性ホルモンの投与を受け、身体を男性化させたが、心は女性。そのギャップに悩む。大学病院での治療では、男性医学生たちの好奇の目にさらされた。「わたしは見世物じゃない」。でも、声がでなかった。25歳になってようやく、真琴さんは「女性」として生きはじめた。

●同じく「XX/XYモザイク型」の光さんには、卵巣と精巣がある。戸籍の性別欄は「空欄」のまま、「女の子」として育てられた。中高一貫の女子校に入学。中学3年のときに戸籍の性別を「男」とし、そのまま附属女子高に進学した。医師は言った。「このまま卵巣を残していてはガン化する怖れがある」。光さんは、卵巣をとり、男性ホルモンの治療を受けることになった。治療に対して、学校側が難色を示す。「男っぽくなって目立つのは困ります」。光さんはホルモン投与を半分に抑えて通学した。光さん曰く、「体は男がいいけれど、趣味や考え方まで男っぽいわけじゃない。・・・結局、真ん中なのかな」。

⇒【特論】LGBTIの権利保障ー比較と歴史を通して(三成美保)

→LGBT「性的指向と性同一性を理由とする差別との闘い」(国連2012年)
http://www.unic.or.jp/activities/humanrights/discrimination/lgbt/