【資料】学習指導要領(地理歴史)地理A・地理B(平成21年改訂・平成26年更新)

第5 地理A

1目標
現代世界の地理的な諸課題を地域性や歴史的背景,日常生活との関連を踏まえて考察し,現
代世界の地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培い,国際社会に主体的に生き
る日本国民としての自覚と資質を養う。
2内容
(1) 現代世界の特色と諸課題の地理的考察
世界諸地域の生活・文化及び地球的課題について,
地域性や歴史的背景を踏まえて考察し,
現代世界の地理的認識を深めるとともに,地理的技能及び地理的な見方や考え方を身に付け
させる。
ア 地球儀や地図からとらえる現代世界
地球儀と世界地図との比較,様々な世界地図の読図などを通して,地理的技能を身に付
けさせるとともに,方位や時差,日本の位置と領域,国家間の結び付きなどについてとら
えさせる。
イ 世界の生活・文化の多様性
世界諸地域の生活・文化を地理的環境や民族性と関連付けてとらえ,その多様性につい
て理解させるとともに,異文化を理解し尊重することの重要性について考察させる。
ウ 地球的課題の地理的考察
環境,資源・エネルギー,人口,食料及び居住・都市問題を地球的及び地域的視野から
とらえ,地球的課題は地域を越えた課題であるとともに地域によって現れ方が異なってい
ることを理解させ,それらの課題の解決には持続可能な社会の実現を目指した各国の取組
や国際協力が必要であることについて考察させる。
(2) 生活圏の諸課題の地理的考察
生活圏の諸課題について,地域性や歴史的背景を踏まえて考察し,地理的技能及び地理的
な見方や考え方を身に付けさせる。
ア 日常生活と結び付いた地図
身の回りにある様々な地図の収集や地形図の読図,目的や用途に適した地図の作成など
を通して,地理的技能を身に付けさせる。
イ 自然環境と防災
我が国の自然環境の特色と自然災害とのかかわりについて理解させるとともに,国内に
みられる自然災害の事例を取り上げ,地域性を踏まえた対応が大切であることなどについ
て考察させる。
ウ 生活圏の地理的な諸課題と地域調査
生活圏の地理的な諸課題を地域調査やその結果の地図化などによってとらえ,その解決
に向けた取組などについて探究する活動を通して,日常生活と結び付いた地理的技能及び
地理的な見方や考え方を身に付けさせる。
3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成すること。
イ 地理的な見方や考え方及び地図の読図や作図,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取
りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導するこ
と。その際,教科用図書「地図」を十分に活用するとともに,地図や統計などの地理情報
の収集・分析には,情報通信ネットワークや地理情報システムなどの活用を工夫すること。
ウ 地図を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,討論したり
するなどの活動を充実させること。
エ 学習過程で政治,経済,生物,地学的な事象なども必要に応じて扱うことができるが,
それらは空間的な傾向性や諸地域の特色を理解するのに必要な程度とすること。
オ 各項目の内容に応じて日本を含めて扱うとともに,日本と比較し関連付けて考察させる
こと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,球面上の世界のとらえ方に慣れ親しませるよう工夫すること。日本の
位置と領域については,世界的視野から日本の位置をとらえるとともに,日本の領域を
めぐる問題にも触れること。また,国家間の結び付きについては,世界の国家群,貿易,
交通・通信,観光の現状と動向に関する諸事象を様々な主題図などを基にとらえさせ,
地理情報の活用の方法が身に付くよう工夫すること。
(イ) イについては,世界諸地域の生活・文化について世界を広く大観する学習と事例地域
を通して考察する学習を組み合わせて扱うこと。その際,生活と宗教のかかわりなどに
ついて考察させるとともに,日本との共通性や異質性に着目させ,異なる習慣や価値観
などをもっている人々と共存していくことの意義に気付かせること。
(ウ) ウについては,地球的課題ごとに世界を広く大観する学習と具体例を通して考察する
学習を組み合わせて扱うこと。その際,環境,資源・エネルギー,人口,食料及び居住
・都市問題は,それぞれ相互に関連し合っていることに留意して取扱いを工夫すること。
イ 内容の(2)については,次の事項に留意すること。
(ア) アからウまでの項目については,地図の読図や作図などを主とした作業的,体験的な
学習を取り入れるとともに,各項目を関連付けて地理的技能が身に付くよう工夫するこ
と。
(イ) アについては,日常生活の中でみられる様々な地図を取り上げ,目的や用途に適した
地図表現の工夫などについて理解させ,日常生活と結び付いた地図の役割とその有用性
について認識させるよう工夫すること。
(ウ) イについては,日本では様々な自然災害が多発することから,早くから自然災害への
対応に努めてきたことなどを具体例を通して取り扱うこと。その際,地形図やハザード
マップなどの主題図の読図など,日常生活と結び付いた地理的技能を身に付けさせると
ともに,防災意識を高めるよう工夫すること。
(エ) ウについては,生徒の特性や学校所在地の事情等を考慮し,地域調査を実施し,その
方法が身に付くよう工夫すること。その際,これまでの学習成果を活用すること。

第6 地理B

1目標
現代世界の地理的事象を系統地理的に,現代世界の諸地域を歴史的背景を踏まえて地誌的に
考察し,現代世界の地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培い,国際社会に主
体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。
2内容
(1) 様々な地図と地理的技能
地球儀や様々な地図の活用及び地域調査などの活動を通して,地図の有用性に気付かせる
とともに,地理的技能を身に付けさせる。
ア 地理情報と地図
地球儀の活用,様々な時代や種類の世界地図の読図,地理情報の地図化などの活動を通
して,各時代の人々の世界観をとらえさせるとともに,地図の有用性に気付かせ,現代世
界の地理的事象をとらえる地理的技能を身に付けさせる。
イ 地図の活用と地域調査
直接的に調査できる地域を地図を活用して多面的・多角的に調査し,生活圏の地域的特
色をとらえる地理的技能を身に付けさせる。
(2) 現代世界の系統地理的考察
世界の自然環境,資源,産業,人口,都市・村落,生活文化,民族・宗教に関する諸事象
の空間的な規則性,傾向性やそれらの要因などを系統地理的に考察させるとともに,現代世
界の諸課題について地球的視野から理解させる。
ア自然環境
世界の地形,気候,植生などに関する諸事象を取り上げ,それらの分布や人間生活との
かかわりなどについて考察させるとともに,現代世界の環境問題を大観させる。
イ 資源,産業
世界の資源・エネルギーや農業,工業,流通,消費などに関する諸事象を取り上げ,そ
れらの分布や動向などについて考察させるとともに,現代世界の資源・エネルギー,食料
問題を大観させる。
ウ 人口,都市・村落
世界の人口,都市・村落などに関する諸事象を取り上げ,それらの分布や動向などにつ
いて考察させるとともに,現代世界の人口,居住・都市問題を大観させる。
エ 生活文化,民族・宗教
世界の生活文化,民族・宗教に関する諸事象を取り上げ,それらの分布や民族と国家の
関係などについて考察させるとともに,現代世界の民族,領土問題を大観させる。
(3) 現代世界の地誌的考察
現代世界の諸地域を多面的・多角的に考察し,各地域の多様な特色や課題を理解させると
ともに,現代世界を地誌的に考察する方法を身に付けさせる。
ア 現代世界の地域区分
現代世界を幾つかの地域に区分する方法や地域の概念,地域区分の意義を理解させると
ともに,その有用性に気付かせる。
イ 現代世界の諸地域
現代世界の諸地域を取り上げ,歴史的背景を踏まえて多面的・多角的に地域の変容や構
造を考察し,それらの地域にみられる地域的特色や地球的課題について理解させるととも
に,地誌的に考察する方法を身に付けさせる。
ウ 現代世界と日本
現代世界における日本の国土の特色について多面的・多角的に考察し,我が国が抱える
地理的な諸課題を探究する活動を通して,その解決の方向性や将来の国土の在り方などに
ついて展望させる。
3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成すること。
イ 地理的な見方や考え方及び地図の読図や作図,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取
りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導するこ
と。その際,教科用図書「地図」を十分に活用するとともに,地図や統計などの地理情報
の収集・分析には,
情報通信ネットワークや地理情報システムなどの活用を工夫すること。
ウ 地図を有効に活用して事象を説明したり,自分の解釈を加えて論述したり,討論したり
するなどの活動を充実させること。
エ 学習過程で政治,経済,生物,地学的な事象なども必要に応じて扱うことができるが,
それらは空間的な傾向性や諸地域の特色を理解するのに必要な程度とすること。
オ 各項目の内容に応じて日本を含めて扱うとともに,日本と比較し関連付けて考察させる
こと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,次の事項に留意すること。
(ア) 地球儀や地図の活用,観察や調査,統計,画像,文献などの地理情報の収集,選択,
処理,
諸資料の地理情報化や地図化などの作業的,
体験的な学習を取り入れるとともに,
各項目を関連付けて地理的技能が身に付くよう工夫すること。
(イ) アについては,地理的認識を深める上で地図を活用することが大切であることを理解
させるとともに,地図に関する基礎的・基本的な知識や技能を習得することができるよ
う工夫すること。
(ウ) イについては,生徒の特性や学校所在地の事情等を考慮し,地域調査を実施し,その
方法が身に付くよう工夫すること。
イ 内容の(2)については,分析,考察の過程を重視し,現代世界を系統地理的にとらえる
視点や考察方法が身に付くよう工夫すること。エについては,領土問題の現状や動向を扱
う際に日本の領土問題にも触れること。
ウ 内容の(3)については,次の事項に留意すること。
(ア) ア及びイについては,内容の(1)及び(2)の学習成果を活用するよう工夫すること。
(イ) アについては,現代世界が自然,政治,経済,文化などの指標によって様々に地域区
分できることに着目させ,それらを比較対照させることによって,地域の概念,地域区
分の意義などを理解させるようにすること。
(ウ) イについては,アで学習した地域区分を踏まえるとともに,様々な規模の地域を世界
全体から偏りなく取り上げるようにすること。また,取り上げた地域の多様な事象を項
目ごとに整理して考察する地誌,取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に
関連付けて考察する地誌,対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察する地
誌の考察方法を用いて学習できるよう工夫すること。
(エ) ウについては,この科目のまとめとして位置付けること。