【資料】学習指導要領(地理歴史)日本史A・日本史B(平成21年改訂・平成26年更新)

第3 日本史A

1目標

我が国の近現代の歴史の展開を諸資料に基づき地理的条件や世界の歴史と関連付け,現代の諸課題に着目して考察させることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。

2内容

(1) 私たちの時代と歴史
現代の社会やその諸課題が歴史的に形成されたものであるという観点から,近現代の歴史的事象と現在との結び付きを考える活動を通して,歴史への関心を高め,歴史を学ぶ意義に気付かせる。
(2) 近代の日本と世界
開国前後から第二次世界大戦終結までの政治や経済,国際環境,国民生活や文化の動向について,相互の関連を重視して考察させる。
ア 近代国家の形成と国際関係の推移
(ア) 近代の萌芽や欧米諸国のアジア進出,文明開化などに見られる欧米文化の導入と明治政府による諸改革に伴う社会や文化の変容,自由民権運動と立憲体制の成立に着目して,開国から明治維新を経て近代国家が形成される過程について考察させる。
(イ) 条約改正や日清・日露戦争前後の対外関係の変化,政党の役割と社会的な基盤に着目して,国際環境や政党政治の推移について考察させる。
イ 近代産業の発展と両大戦をめぐる国際情勢
(ア) 産業革命の進行,都市や村落の生活の変化と社会問題の発生,学問・文化の進展と教育の普及,大衆社会と大衆文化の形成に着目して,近代産業の発展と国民生活の変化について考察させる。
(イ) 諸国家間の対立や協調関係と日本の立場,国内の経済・社会の動向,アジア近隣諸国との関係に着目して,二つの世界大戦とその間の内外情勢の変化について考察させる。
ウ 近代の追究
近代における政治や経済,国際環境,国民生活や文化の動向が相互に深くかかわっているという観点から,産業と生活,国際情勢と国民,地域社会の変化などについて,具体的な歴史的事象と関連させた適切な主題を設定して追究し表現する活動を通して,歴史的な見方や考え方を育てる。

(3) 現代の日本と世界
第二次世界大戦後の政治や経済,国際環境,国民生活や文化の動向について,現代の諸課題と近現代の歴史との関連を重視して考察させる。

ア 現代日本の政治と国際社会
占領政策と諸改革,新憲法の成立,平和条約と独立,国際交流や国際貢献の拡大などに着目して,我が国の再出発及びその後の政治や対外関係の推移について考察させる。
イ 経済の発展と国民生活の変化
戦後の経済復興,高度経済成長と科学技術の発達,経済の国際化,生活意識や価値観の変化などに着目して,日本経済の発展と国民生活の変化について考察させる。
ウ 現代からの探究
現代の社会やその諸課題が歴史的に形成されたものであるという観点から,近現代の歴史にかかわる身の回りの社会的事象と関連させた適切な主題を設定させ,資料を活用して探究し,その解決に向けた考えを表現する活動を通して,歴史的な見方や考え方を身に付けさせる。

3 内容の取扱い

(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 我が国の近現代の歴史の展開について国際環境や地理的条件などと関連付け,世界の中の日本という視点から考察させること。
イ 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成すること。
ウ 年表,地図その他の資料を一層活用させるとともに,地域の文化遺産,博物館や資料館の調査・見学などを取り入れるよう工夫すること。
エ 国民生活や文化の動向については,地域社会の様子などと関連付けるとともに,衣食住や風習・信仰などの生活文化についても扱うようにすること。
(2) この科目の指導に当たっては,客観的かつ公正な資料に基づいて,事実の正確な理解に導くようにするとともに,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成するようにする。その際,核兵器などの脅威に着目させ,戦争を防止し,平和で民主的な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させる。
(3) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,この科目の導入として位置付けること。また,近代,現代などの時代区分の持つ意味,近現代の歴史の考察に有効な諸資料についても扱うこと。
イ 内容の(2)のウ及び(3)のウについては,資料を活用して歴史を考察したりその結果を表現したりする技能を高めること。内容の(3)のウについては,この科目のまとめとして位置付けること。

第4 日本史B

1目標

我が国の歴史の展開を諸資料に基づき地理的条件や世界の歴史と関連付けて総合的に考察させ,我が国の伝統と文化の特色についての認識を深めさせることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。

2内容

(1) 原始・古代の日本と東アジア
原始社会の特色及び古代国家と社会や文化の特色について,国際環境と関連付けて考察させる。
ア 歴史と資料
遺跡や遺物,文書など様々な歴史資料の特性に着目し,資料に基づいて歴史が叙述されていることなど歴史を考察する基本的な方法を理解させ,歴史への関心を高めるとともに,文化財保護の重要性に気付かせる。
イ 日本文化の黎明と古代国家の形成
旧石器文化,縄文文化及び弥生文化の時代を経て,我が国において国家が形成され律令体制が確立する過程,隋・唐など東アジア世界との関係,古墳文化,天平文化に着目して,古代国家の形成と展開,文化の特色とその成立の背景について考察させる。
ウ 古代国家の推移と社会の変化
東アジア世界との関係の変化,荘園・公領の動きや武士の台頭など諸地域の動向に着目して,古代国家の推移,文化の特色とその成立の背景及び中世社会の萌芽について考察させる。
(2) 中世の日本と東アジア
中世国家と社会や文化の特色について,国際環境と関連付けて考察させる。
ア 歴史の解釈
歴史資料を含む諸資料を活用して,歴史的事象の推移や変化,相互の因果関係を考察するなどの活動を通して,歴史の展開における諸事象の意味や意義を解釈させる。
イ 中世国家の形成
武士の土地支配と公武関係,宋・元などとの関係,仏教の動向に着目して,中世国家の形成過程や社会の仕組み,文化の特色とその成立の背景について考察させる。
ウ 中世社会の展開
日本の諸地域の動向,日明貿易など東アジア世界との関係,産業経済の発展,庶民の台頭と下剋上,武家文化と公家文化のかかわりや庶民文化の萌芽に着目して,中世社会の多様な展開,文化の特色とその成立の背景について考察させる。

(3) 近世の日本と世界
近世国家と社会や文化の特色について,国際環境と関連付けて考察させる。
ア 歴史の説明
歴史的事象には複数の歴史的解釈が成り立つことに気付かせ,それぞれの根拠や論理を踏まえて,筋道立てて考えを説明させる。

イ 近世国家の形成
ヨーロッパ世界との接触やアジア各地との関係,織豊政権と幕藩体制下の政治・経済基盤,身分制度の形成や儒学の役割,文化の特色に着目して,近世国家の形成過程とその特色や社会の仕組みについて考察させる。
ウ 産業経済の発展と幕藩体制の変容
幕藩体制下の農業など諸産業や交通・技術の発展,町人文化の形成,欧米諸国のアジアへの進出,学問・思想の動きに着目して,近世の都市や農山漁村における生活や文化の特色とその成立の背景,幕藩体制の変容と近代化の基盤の形成について考察させる。
(4) 近代日本の形成と世界
近代国家の形成と社会や文化の特色について,国際環境と関連付けて考察させる。
ア 明治維新と立憲体制の成立
開国と幕府の滅亡,文明開化など欧米の文化・思想の影響や国際環境の変化,自由民権運動と立憲体制の成立に着目して,明治維新以降の我が国の近代化の推進過程について考察させる。
イ 国際関係の推移と立憲国家の展開
条約改正,日清・日露戦争とその前後のアジア及び欧米諸国との関係の推移に着目して,我が国の立憲国家としての展開について考察させる。
ウ 近代産業の発展と近代文化
国民生活の向上と社会問題の発生,学問の発展や教育制度の拡充に着目して,近代産業の発展の経緯や近代文化の特色とその成立の背景について考察させる。
(5) 両世界大戦期の日本と世界
近代国家の展開と社会や文化の特色について,国際環境と関連付けて考察させる。
ア 政党政治の発展と大衆社会の形成
政治や社会運動の動向,都市の発達と農山漁村の変化及び文化の大衆化に着目して,政党政治の発展,大衆社会の特色とその成立の背景について考察させる。
イ 第一次世界大戦と日本の経済・社会
国際社会の中の日本の立場に着目して,第一次世界大戦前後の対外政策の推移や大戦が国内の経済・社会に及ぼした影響について考察させる。
ウ 第二次世界大戦と日本
国際社会の動向,国内政治と経済の動揺,アジア近隣諸国との関係に着目して,対外政策の推移と戦時体制の強化など日本の動向と第二次世界大戦とのかかわりについて考察させる。
(6) 現代の日本と世界
現代の社会や国民生活の特色について,国際環境と関連付けて考察させ,世界の中での日本の立場について認識させる。
ア 現代日本の政治と国際社会
占領政策と諸改革,新憲法の成立,平和条約と独立,国際交流や国際貢献の拡大などに着目して,我が国の再出発及びその後の政治や対外関係の推移について考察させる。
イ 経済の発展と国民生活の変化
戦後の経済復興,高度経済成長と科学技術の発達,経済の国際化,生活意識や価値観の変化などに着目して,日本経済の発展と国民生活の変化について考察させる。
ウ 歴史の論述
社会と個人,世界の中の日本,地域社会の歴史と生活などについて,適切な主題を設定させ,資料を活用して探究し,考えを論述する活動を通して,歴史的な見方や考え方を身に付けさせる。

3 内容の取扱い

(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 我が国の歴史と文化について各時代の国際環境や地理的条件などと関連付け,世界の中の日本という視点から考察させること。
イ 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選して指導内容を構成すること。その際,各時代の特色を総合的に考察する学習及び前後の時代を比較してその移り変わりを考察する学習それぞれの充実を図ること。
ウ 年表,地図その他の資料を一層活用させるとともに,地域の文化遺産,博物館や資料館の調査・見学などを取り入れるよう工夫すること。
エ 文化に関する指導に当たっては,各時代の文化とそれを生み出した時代的背景との関連,外来の文化などとの接触や交流による文化の変容や発展の過程などに着目させ,我が国の伝統と文化の特色とそれを形成した様々な要因を総合的に考察させるようにすること。衣食住や風習・信仰などの生活文化についても,時代の特色や地域社会の様子などと関連付け,民俗学や考古学などの成果の活用を図りながら扱うようにすること。
オ 地域社会の歴史と文化について扱うようにするとともに,祖先が地域社会の向上と文化の創造や発展に努力したことを具体的に理解させ,それらを尊重する態度を育てるようにすること。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)のア,(2)のア,(3)のア,(6)のウを通じて,資料を活用して歴史を考察したりその結果を表現したりする技能を段階的に高めていくこと。様々な資料の特性に着目させ複数の資料の活用を図って,資料に対する批判的な見方を養うとともに,因果関係を考察させたり解釈の多様性に気付かせたりすること。
イ 内容の(1)のアについては,この科目の導入として位置付けること。内容の(2)のア及び(3)のアについては,原則として各時代の学習内容と関連させて適切な時期に実施すること。内容の(6)のウについては,この科目のまとめとして位置付けること。
(3) 近現代史の指導に当たっては,客観的かつ公正な資料に基づいて,事実の正確な理解に導くようにするとともに,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成するようにする。その際,核兵器などの脅威に着目させ,戦争を防止し,平和で民主的な国際社会を実現することが重要な課題であることを認識させる。