権利宣言(人権宣言)と女性

富永智津子(掲載:2014.4.18)

ここでは、高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』に収録されているマグナ・カルタ以降の「権利宣言(人権宣言)」から、女性に特化した条文を抜粋して紹介する。

【イギリス】==============================================================

 1215年「マグナ・カルタ」

  • 第7条
  • 寡婦は、その夫の死後、直ちにかつ妨害をうけることなく、その嫁資と相続財産を取得するものとする。また、彼女は、その寡婦産、嫁資、またはその夫と彼女自身が夫の死亡の日に保有した相続財産のために、何ものをも与えなくてよい。彼女は夫の家の中に夫の死後40日間止まるものとし、寡婦産は[夫の遺産を分割の上]その期間内に彼女にふりあてられるべきものとする。
  • 第8条
  • 寡婦は夫なくして生活することを欲する限り、婚姻を強制されない。ただし、朕から封を受けている場合には朕の同意なしに婚姻しないこと、を保証することを条件とする。
  • 第54条
  • 何人も婦人の私訴にもとづいて、逮捕、監禁されない。ただし、その私訴が、その婦人の夫にかんするものである場合には、このかぎりではない。

1918年「人民代表法」

  • 30歳以上の女子に選挙権を付与

1919年「性別による欠格(の除去)に関する法律」

  • 第1条
  • 人は、公の職務の遂行、文官もしくは司法官の職もしくは地位けの任命、これらの職もしくは地位に在任すること、軍事的な性格をもたない職業もしくは業務への就職もしくはその遂行、または(国王の特許状によるものであると否とを問わす)法人格の賦与をうけた団体への加入について、性別または婚姻により、その資格なきものとされてはならない。また、陪審員となる責務を性別または婚姻により、免除されることもない。ただし、
  • (a)  本条の規定にかかわらず、陛下は、枢密院令により、女子の公務員への任命の方法および任用された女子の任命または在任の条件を規定し、定める規則、ならびに陛下の海外の領土または外国における行政機構中のある部局または地位を男子にのみ留保する機能を与える規則、を設ける権限を与えることができる。
  • (b)  裁判官、四季裁判所の主席裁判官、市裁判官、その他事件を審理する者は、その裁量により、当事者(刑事事件においては、検察官と被告人[双方]を含む)によって、もしくは当事者のために、なされた申し立てにより、または職権によって、事件の要請するところにしたがって、陪審が男子のみによって構成さるべきこと、または女子のみによって構成さるべきこと、を命ずることができ、また、女子が、提出される証拠の性質または審理される争点の性質を理由に、その事件の陪審員となることを免除されたい旨の申し立てをした時に、このような免除を許すことができる。
  • つぎのような裁判所規則を設けることができる。
  • (a) 陪審員が、陪審員名簿のなかから呼出され、選出される方法を定める規則
  • (b)  医学的理由から[陪審員となることが]不適当な女子に、陪審員としての出廷を免除する規則
  • 第2条 
  • 女子は、つぎの条件を充たした場合においてのみ、三年間の修習期間を終えたのち、廷外弁護士(solicitor)の資格を与えられ、登録をみとめられる。すなわち、もし彼女が男子であったならば[弁護士となる]資格を与えられたであろうような学士号を得ていること、または、彼女が卒業試験の受験をみとめられてこれに合格し、かつ彼女が卒業試験に合格したときには、女子に学士号をとることを認めていなかった大学で男子に要求されている在学期間、その大学によって女子に要求されている条件にしたがい、在籍したことを要する。
  • 第3条 いかなる大学の規約または設立特許状中の条項も、大学当局が、女子をその一員として入学させるため、または、学士号、もしくは大学内における・もしくはそれと関連する・特権を与えるために、適当と考える規定を設けることを禁ずるものと解されてはならない。

【フランス】==================================================================

1946年「第四共和国憲法の前文」

  • 法は、あらゆる領域において、婦人に男子と同等の権利を保障する。

【西ドイツ】============================================================

1919年「ワイマール憲法」

  • 第109条
  • (2) 男子および女子は、原則として同一の公民権を有し、および公民としての義務を負う。
  •  第119条
  • (1) 婚姻は、家族生活および国民の維持・増殖の基礎として、憲法の特別の保護をうける。婚姻は、両性の同権を基礎とする。
  • (3) 母性は、国の保護および配慮を求める権利を有する。
  •  第128条
  • (2) 女性の公務員に対するすべての例外規定は、廃止される。 

1949年「ボン憲法」

  • 第3条
  • (2)男子および女子は同権である。
  • (3)何人も、その性別、門地、種族、言語、故郷および家系、その信仰、宗教的または政治的見解によって不利益をうけ、または特   権を受けてはならない。
  • 第6条
  • (4)すべての母は、共同社会の保護と配慮とを請求する権利を有する。

【東ドイツ】==================================================================

1949年「東ドイツ憲法」

  • 第7条
  • (1)男子および女子は同権である。
  • (2)女性の同権に反するすべての法律および規定は、廃止される。
  • 第18条
  • (4)男子と女子、成人と少年は、同一の労働について、同一の賃金をうける権利を有する。
  • (5)女子は、労働関係において特別の保護をうける。共和国法律によって、女子が市民および生産者としての任務を、その妻および母としての義務と合致させうることを保障する使節がつくられる。
  • 第30条
  • (2)家庭における男子と女子との同権を侵害する法律および規定は、廃止されたものとする。
  • 第32条
  • (1)女子は、母たるあいだ、国の特別な保護と配慮とを要求する権利を有する。
  • (2)共和国は母性保護法を発布する。母子のための保護施設がつくられなければならない。

【ソヴィエト】======================================================================

1936年「ソヴィエト社会主義共和国同盟憲法」

  • 第122条
  • ソ同盟における婦人は、経済的、国家的、文化的および社会的・政治的生活のすべての分野において、男子と平等の権利を与えられる。

【ユーゴスラヴィア】==================================================================

1946年「ユーゴスラヴィア連邦人民共和国憲法」

  • 第24条
  •  婦人は国家的、経済的および社会的・政治的生活のすべての分野で、男子と同権である。
  •  婦人は男子と同一の労働に対して同一の支払いをうける権利を有し、婦人の労働は特別の保護をうける。
  • 国家は母と幼児の利益を産院および幼稚園、託児所の組織によって、ならびに母に産前産後の有給休暇を保障することによって、とくに保護する。

【ポーランド】======================================================================

 1952年「ポーランド人民共和国憲法」

  • 第66条
  • (1)ポーランド人民共和国において婦人は、国家的、政治的、経済的、社会的および文化的な生活のすべての分野で、男子と平等の権利をもつ。
  • (2)婦人の同権は、つぎのことによって保障される。
  •  1.男子と平等の労働の権利と、「同一労働に対して同一の支払い」という原則にしたがった給与をうけとる権利、急速の権利、社会保険に対する権利、教育をうける権利、名誉称号と勲功に対する権利および公職につく権利。
  •  2.母親と幼児の世話、妊婦の保護、産前産後の有給休暇、産院、託児所および幼稚園網の拡大、サービス使節と公共食堂網の発達。
  • 第83条 婦人は男子と平等のすべての選挙権をもつ。

【ルーマニア】=======================================================

1952年「ルーマニア人民共和国憲法」

  • 第83条 
  • ルーマニア人民共和国の婦人は、経済的、政治的、国家的および文化的な生活のすべての分野で男子と平等の権利をもつ。
  • 婦人は、労働、労働に対する支払い、休息、社会保険および教育について、男子と平等の権利をもつ。
  • 国家は結婚と家族を保護し、母親と幼児の利益をまもる。国家は子供の多い母親と一人暮らしの母親に援助を与え、婦人が妊娠したときに有給休暇を与え、産院、託児所および幼稚園を組織する。
  • 第96条
  • 婦人は男子と平等に大国民会議と人民ソヴィエトの選挙権と被選挙権をもつ。

【中華人民共和国】====================================================

1954年「中華人民共和国憲法」

  • 第86条 婦人は男子と平等の選挙権および被選挙権を有する。
  • 第96条 中華人民共和国の婦人は、政治・経済・文化・社会および家庭などの各生活分野で、男子と平等の権利を有する。