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【家③】モルゲンガーベ

モルゲンガーベ[(独)Morgengabe]

三成美保(初出『事典家族』)

前近代ドイツの夫婦間の多様な贈与がモルゲンガーベとよばれる。一般にモルゲンガーベは夫から妻への婚礼の翌朝の贈り物をさすとされてきたが、実際にはそれにかぎらず、妻から夫への贈与や婚姻締結時の贈り物をもまた意味する。夫死亡時に妻に財産を贈るという約束を婚姻締結時にする場合にもこの表現が使われている。贈られた財産はさまざまであり、妻は動産の場合には完全な所有権を得たが、不動産の場合にはしばしば用益権を得ただけであった。

モルゲンガーベの機能については見解が分かれる。①処女の代償、②同棲と区別するための贈与、③寡婦扶養料、④子供の相続権を確保するための特別財産。このうち、寡婦やフリーデル婚(Friedelehe)にもモルゲンガーベが与えられていることをみると①、②は支持しがたい。

モルゲンガーベはすでに部族法典にみられ、中世には慣習的制度となっていた。『シュヴァーベンシュピーゲル』(Schwabenspiegel)などの法書では贈与財産は身分や階層によって異なるとされ、体僕農民は一頭の羊か山羊あるいは5シリング、商人は10マルクか一頭の家畜に限定されていたが、都市ではもっとモルゲンガーベの額は上昇している。モルゲンガーベにたいする妻の権利は地域によって異なる。シュヴァーベン、チロルでは完全な所有権、バイエルン、オーストリアでは夫死亡時の用益権保障、ザクセンでは夫死亡時の金銭受領権、財産共通制をとるヴェストファーレンではほとんど意義をもたなかった。

近世後期にはしだいにモルゲンガーベの意義は減じ、啓蒙期の法典編纂にはなおモルゲンガーベ規定がみられるが、1900年の民法典ではもはや消滅する。(三成美保)

[参考文献]ミッタイス,世良晃志郎/広中俊雄訳『ドイツ私法概説』創文社,1961;前川和也編著『家族・世帯・家門ーー工業化以前の世界から』ミネルヴァ書房,1993.

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