【法学13】労働(時事2015年)

掲載:2015.10.04 作成:三成美保

2015年の労働法政策関係の時事情報を示します。新しい事項は下に順次追加しています。

○2015.08.28. 女性活躍推進法の成立

出典→厚労省「女性活躍推進法特集ページ」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

○2015.09.11. 改正労働者派遣法の成立

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf

○2015.10.02. 日弁連決議「全ての女性が貧困から解放され、性別により不利益を受けることなく働き生活できる労働条件、労働環境の整備を求める決議」@日弁連 

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2015/2015_2.html

日本国憲法は、性別による差別を禁止し、国民の健康で文化的な生活を営む権利及び人間らしく働くための労働条件を保障することを求めている。また、国が1985年に批准した女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下「女性差別撤廃条約」という。)は、「人間の奪い得ない権利」としての労働の権利を女性に保障し、女性に対する差別を撤廃するための全ての適当な措置を採ることを求めている。しかし、これまで国は、雇用の分野をはじめとして、広く男女の平等を実現するための法の制定、改正等を行っているが、いまだ十分ではない。
この30年間に、女性労働者は急増したものの、その多くがパート・派遣・契約社員等の非正規の職員・従業員(以下「非正規労働者」という。)であり、正規の職員・従業員(以下「正規労働者」という。)は微増にとどまる。また、正規・非正規を問わず女性労働者と男性労働者との間の賃金格差は大きいが、同性間でも、正規労働者と非正規労働者との賃金格差は著しい。女性労働者の半数近くが経済的自立の困難な年収200万円以下で、その大半は非正規労働者である。女性労働者の過半数を占めている女性非正規労働者は、性別による差別と雇用形態の違いによる差別という二重の差別を受けているのが実情であり、特に勤労世代の単身女性や母子世帯が深刻な貧困にあえいでいる。
女性非正規労働者の急増の原因の一つとして、「男は外で働き、女は家庭を守る。」といった性別役割分担の意識が現在でも社会的に強い影響力を持ち、多くの女性が家事・育児・介護等の家庭内労働を担っているという現実がある。そのため、女性にとって時間外労働が当然視される正規労働者として働くことが難しくなっており、多くの女性が結婚や出産、育児、介護等を契機に離職せざるを得ず、その後、再就職をするにしても、身分が不安定な上、低賃金の非正規労働者として働くしかない状況におかれているのである。
また、現行の税・社会保障制度は、主たる男性稼ぎ手とその妻子で構成された世帯(以下「標準モデル世帯」という。)をモデルに構築されているが、これは、結果的にその世帯に属する女性の就業抑制・調整につながっている上、主たる男性稼ぎ手の存在を前提とすることで性別役割分担の固定化を招き、かつ、単身女性や母子世帯を更に困窮させる要因になっている。
女性が直面する格差と貧困を克服するためには、雇用形態等の違いによって不当に格差をつけられず均等待遇を受けること、男女共に就労と家事・育児・介護等の家族的責任を両立しながら安定、継続して働けること、性別に基づく差別をなくすこと、性別役割分担及びそれに基づく不利益をなくすことなどが必要であり、当連合会は、特に以下の諸方策が実施されることを求める。

1 全ての女性が、人間らしい生活を営むに足る賃金を得るとともに、均等待遇を実現するため、国及び地方自治体は、いかなる雇用形態であれ、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(以下「ILO100号条約」という。)及び女性差別撤廃条約第11条1項(d)並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)第7条(a)(ⅰ)号を遵守し、
(1) 客観的な職務評価基準を整え、同一価値労働同一賃金の原則が確保される立法を含む措置を早急に構築すること。
(2) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」という。)第6条の差別禁止事項に「賃金」を加えること。
(3) 男女雇用機会均等法第7条の「厚生労働省令で定めるもの」とした規定を改正し、女性に対する間接差別となる事項が、それに限定されるものではないことを明記すること。
(4) 全ての人が、その属する世帯の形態、性別にかかわらず、人間らしい生活を営むことができるように、「地域別最低賃金」を大幅に引き上げること。また、国及び地方自治体は、国や地方自治体が事業主と締結する契約(公契約)において、使用者となる事業主が使用する労働者の最低賃金を定め、これを遵守させる措置を採ること。

2 全ての女性が安定して働き続けることができるように、就労と家族的責任を両立し得る環境を整備するため、国は、家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約(以下「ILO156号条約」という。)及び男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する勧告(以下「ILO165号勧告」という。)を遵守し、
(1) 男女労働者の労働時間は1日8時間、週40時間を上限とすることが原則であって、これを超える時間外労働は例外的なものであることを改めて確認し、男女労働者が家事・育児・介護等の家族的責任を分担できるような措置を講じるとともに、時間外・休日・深夜労働について、法律によって、労使間協定によっても超えることができない労働時間の上限時間等を1日及び週単位で設定すること。
(2) 雇用形態にかかわらず、全ての女性労働者が安心して妊娠・出産し、そして、全ての男女労働者が家族的責任を分担する機会を確保できるように、そのために設けられた諸制度の利用を積極的に促進する措置を設け、かつ、事業主に対しては労働者が諸制度を利用することを制限しないよう指導・監督し、その違反に対しては制裁措置を採ること。

3 不当な格差を是正し、男女雇用機会均等法違反による不利益を受けた労働者を実効的に救済するため、国は、
(1) 男女雇用機会均等法等に、差別の存在に関する推定規定、違反した場合の法的効果、裁判所が命じることができる救済措置を明記すること。
(2) 救済制度として、独立した行政委員会を新設し、あわせて、行政委員会の発する是正命令違反に対し科料ないし罰金による制裁を強化すること。

4 性別役割分担及びそれに基づく不利益を解消するため、国及び地方自治体は、男女共同参画社会基本法の定める理念を実現し、
(1) 税・社会保障制度において、女性による無償労働の提供を前提とした、主たる男性稼ぎ手とその妻子で構成された世帯を標準モデルとする制度設計を見直し、諸制度を多様な家族の形態に応じた制度に変革し、所得の再分配機能を強化すること。
(2) 性別役割分担の問題を解消するため、学校、職場、家庭、地域におけるジェンダー平等教育の制度を整えるとともに、その実施を支援すること。

5 国は、国及び地方自治体、並びに事業主が、これまでの性差別の結果を是正するため、積極的差別是正措置を行うことを法律で義務付け、その実効性を確保するための具体的な規定を策定すること。

当連合会は、全ての女性が貧困から解放され、性別により不利益を受けることなく働き、健康で文化的な、人間らしい豊かな生活を営むに足る労働条件、労働環境を享受できるように、上記諸課題の実現に向けて全力を尽くすことを決意する。
以上のとおり決議する。

2015年(平成27年)10月2日 日本弁護士連合会(以下略)